実は、コード「柏の赤獅子」の計画は秘密裏に進行していたのだ。
一昨日(日曜)の晩、ボクは『赤獅子』と連絡を取った。
そのときボクは既に酔っていた。
メモ帳に記しておいた04から始まる番号をプッシュした。
電話の向こうは“メス赤獅子”だった。
なんて言っているのかうまく聞き取れなかったがボクはかまわず訊いた。
「明日(月曜)はやっているのか?」
返事はYES。11時から始めると言う。
それを確認するとボクは電話を切った。
だけど尋ね忘れたことがあったから、スグに掛けなおした。
電話に出たのはやはり“メス赤獅子”だった。
「そっちにオリジナルのものはあるか?」
返事はYESだったが、明日の営業は12時からだと訂正の報告があった。
結構、アバウトな『赤獅子』だなと思った。
友人KRHのマンションを出たのは9時過ぎ。
友人KRHの奥さんは、もっとゆっくりしていってもいいのよと優しく言ってくれたが、そういうワケにもいかなかった。
KRHの住むマンションは、工場跡地に再開発で建設された10数棟からなる高層マンション群の南西側に位置していて、6階の部屋からはTOKAIDO LINEが見下ろせた。マンション群の中央には瀟洒な集会所や図書館があって北東側には体育館もあり、ボクが住んでる熊本なんかじゃ考えられないような設備が揃っていて、共用部分の全体的な雰囲気はカリフォルニアになっていた。
ボクはそのカリフォルニアを背にしながら、OOFUNA STATIONに向かって歩き出した。
OOFUNAからTOKAIDO LINE、YAMANOTE LINE、JOBAN LINEに乗って、KASHIWAに到着したのは、11時30分だった。
ちょうどいい時間だった。
ボクはあるデパートの地下に潜り国土地理院の1万分の1の地形図を購入した。
そのとき携帯が鳴った。
TDKオヤジからだった。電波の入りが悪くて用件が何か分からなかったけど、ボクは自分のミッションに集中することにした。
地形図を頼りに目的地に向かった。
目的地に近接したと思ったところで、ボクは過ちを犯しているのではないのかと疑い始めた。
ボクはタバコを取り出し路上で一服した。
メモに記した住所と、目的地と思ってやってきた地形図に記された住所を交互に眺めた。
微妙に違った。
メモにはCHUOUCHOU2-○-△、目指してやってきた近辺の住所はCHUOU2CHOUMEとなっていた。
やっちまったと思った。
全然違うところに来てしまったかもしれない、そう思った。
ボクの真正面には不動産屋があった。入り口には自動販売機があった。
無糖の缶コーヒーを2缶購入すると、迷わず、その不動産屋の中へ入った。
入り口の一番近いところにいたのはトータス松本に似た青年だった。
ボクは彼のデスクに缶コーヒーを置き、目下の悩みを打ち明けた。
トータス君は、「道を尋ねるだけなのに缶コーヒーとは!、その心意気、気に入っちゃいました、スッゲーオトコっぽいです!」なんて大げさに喜んでくれた。だけど、お店の中には3人の男性従業員がいて1本足りねぇ~なんて思ったりした。
そして、『赤獅子』について尋ねてみた。
すると、トータス君は『赤獅子』のことを知っていて、ボクの大荷物を見ると、アナタもそういうお仕事をしているのかみたいなことを訊いてきた。
そんな会話をしている間に、奥にいたメガネの男性職員が、A3用紙に地図をプリントアウトしてくれた。
そのお店をでるときにトータス君は言った。
「熊本の人たちに、KASHIWAの人は親切だったと伝えてください」
そしてボクは言った。
「缶コーヒーは3人で仲良く飲んでください」
手渡された地図には、『赤獅子』までの道順がピンク色の蛍光ペンで示されていた。
『赤獅子』に到着した。時刻は12時15分になっていた。
しかし『赤獅子』は閉まっていた。
ここまで来て、ミッションは失敗に終わるのかとそう思ったら、急に腹が減ってきた。
そこで、『赤獅子』の隣の隣の隣くらいにあった古民家を利用した洒落たカフェに突入し、生ビールと日替わりのランチを注文した。
つづく
一昨日(日曜)の晩、ボクは『赤獅子』と連絡を取った。
そのときボクは既に酔っていた。
メモ帳に記しておいた04から始まる番号をプッシュした。
電話の向こうは“メス赤獅子”だった。
なんて言っているのかうまく聞き取れなかったがボクはかまわず訊いた。
「明日(月曜)はやっているのか?」
返事はYES。11時から始めると言う。
それを確認するとボクは電話を切った。
だけど尋ね忘れたことがあったから、スグに掛けなおした。
電話に出たのはやはり“メス赤獅子”だった。
「そっちにオリジナルのものはあるか?」
返事はYESだったが、明日の営業は12時からだと訂正の報告があった。
結構、アバウトな『赤獅子』だなと思った。
友人KRHのマンションを出たのは9時過ぎ。
友人KRHの奥さんは、もっとゆっくりしていってもいいのよと優しく言ってくれたが、そういうワケにもいかなかった。
KRHの住むマンションは、工場跡地に再開発で建設された10数棟からなる高層マンション群の南西側に位置していて、6階の部屋からはTOKAIDO LINEが見下ろせた。マンション群の中央には瀟洒な集会所や図書館があって北東側には体育館もあり、ボクが住んでる熊本なんかじゃ考えられないような設備が揃っていて、共用部分の全体的な雰囲気はカリフォルニアになっていた。
ボクはそのカリフォルニアを背にしながら、OOFUNA STATIONに向かって歩き出した。
OOFUNAからTOKAIDO LINE、YAMANOTE LINE、JOBAN LINEに乗って、KASHIWAに到着したのは、11時30分だった。
ちょうどいい時間だった。
ボクはあるデパートの地下に潜り国土地理院の1万分の1の地形図を購入した。
そのとき携帯が鳴った。
TDKオヤジからだった。電波の入りが悪くて用件が何か分からなかったけど、ボクは自分のミッションに集中することにした。
地形図を頼りに目的地に向かった。
目的地に近接したと思ったところで、ボクは過ちを犯しているのではないのかと疑い始めた。
ボクはタバコを取り出し路上で一服した。
メモに記した住所と、目的地と思ってやってきた地形図に記された住所を交互に眺めた。
微妙に違った。
メモにはCHUOUCHOU2-○-△、目指してやってきた近辺の住所はCHUOU2CHOUMEとなっていた。
やっちまったと思った。
全然違うところに来てしまったかもしれない、そう思った。
ボクの真正面には不動産屋があった。入り口には自動販売機があった。
無糖の缶コーヒーを2缶購入すると、迷わず、その不動産屋の中へ入った。
入り口の一番近いところにいたのはトータス松本に似た青年だった。
ボクは彼のデスクに缶コーヒーを置き、目下の悩みを打ち明けた。
トータス君は、「道を尋ねるだけなのに缶コーヒーとは!、その心意気、気に入っちゃいました、スッゲーオトコっぽいです!」なんて大げさに喜んでくれた。だけど、お店の中には3人の男性従業員がいて1本足りねぇ~なんて思ったりした。
そして、『赤獅子』について尋ねてみた。
すると、トータス君は『赤獅子』のことを知っていて、ボクの大荷物を見ると、アナタもそういうお仕事をしているのかみたいなことを訊いてきた。
そんな会話をしている間に、奥にいたメガネの男性職員が、A3用紙に地図をプリントアウトしてくれた。
そのお店をでるときにトータス君は言った。
「熊本の人たちに、KASHIWAの人は親切だったと伝えてください」
そしてボクは言った。
「缶コーヒーは3人で仲良く飲んでください」
手渡された地図には、『赤獅子』までの道順がピンク色の蛍光ペンで示されていた。
『赤獅子』に到着した。時刻は12時15分になっていた。
しかし『赤獅子』は閉まっていた。
ここまで来て、ミッションは失敗に終わるのかとそう思ったら、急に腹が減ってきた。
そこで、『赤獅子』の隣の隣の隣くらいにあった古民家を利用した洒落たカフェに突入し、生ビールと日替わりのランチを注文した。
つづく
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