1969/04/09に生まれて

1969年4月9日に生まれた人間の記録簿。例えば・・・・

『景行天皇伝説を巡る冒険』15.古代の鉄資源

2022-12-05 21:32:00 | 景行天皇の記録
【古代の鉄資源】
菊池川流域が肥後国の中心となった他の地質学的な背景について、さらに踏み込んで考えてみると、そこに浮かび上がってくるものがあります。

結論から言うと、それは「鉄資源」です。

近年の考古学の成果によって熊本県の弥生時代における鉄器類の出土数は全国一位となりました。出土数は1607点にのぼり2位の福岡県をはるかに凌ぎます。これは何を意味するのでしょうか。現在、弥生時代に製鉄が始まったとする考古学的な証拠は見つかっていません。定説では、日本における製鉄の始まりは古墳時代の6世紀中ごろとされています。吉備地方が発祥の地とされ、原料は磁鉄鉱、つまり砂鉄が使用されていました。いわゆる「たたら製鉄」です。そして、この砂鉄を使用する製鉄方法が吉備地方から全国に伝播したと考えられています。

磁鉄鉱という鉱物は、火山岩や深成岩、つまり火山活動に伴って生成した岩石中に含まれます。このため、火山国である日本では磁鉄鉱(Magnetite,Fe304)が古代の製鉄、特に、たたら製鉄の原料として利用されてきました。
一方、世界に目を向けると、製鉄の起源は起源前2000年頃のアナトリア地方に住むプロト・ヒッタイトの人々に遡るとされています。そして製鉄技術はエジプトやギリシャ、メソポタミアの周辺地域からヨーロッパやアジア、北アフリカに伝わっていき、紀元前400年頃にインド、中国に伝わったとされています。そして、ヨーロッパの製鉄で原料とされたのは、鉄分に富む地下水から鉄バクテリアの代謝物として生成、沈殿、堆積した水酸化鉄が固化した褐鉄鉱(Limonite,FeO(OH)・nH2O)でした。

日本は火山国であり火山活動によって噴出した岩石は各地に分布します。そして、それらの岩石には鉄を含む鉱物も含まれていることから、風化によって生成した土壌中にも鉄分が含まれています。これらが雨水によって土中に溶け出して地下水に運ばれ、再び鉄分を多く含んだ状態で地表に湧水すると鉄バクテリアの代謝生成物として水酸化鉄が生成されると考えられています。雨量の多い日本の低地には湿地帯が発達しやすく、このような水酸化鉄の生成が現在も各地で見られ、それらが石化した褐鉄鉱は「鳴石(なるいし)」「鈴石(すずいし)」「高師小僧(たかしこぞう)」と呼ばれています。
このような地質的な背景から、日本における製鉄の歴史は定説よりも古く褐鉄鉱を原料した製鉄が、「たたら製鉄」に先んじて始まっていたのではないかとも言われています。近年、市井の研究者が七輪を用いて褐鉄鉱から製鉄に成功した例も報告されています。


八重山地方の離島で古老から貰った鈴石


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