僕が小学生の頃は土曜日も半ドンで、ゴールデンウイークも飛び石連休が当たり前だった。
だから小学校も飛び石連休の合間に写生大会とか遠足といった行事を当てていた。
僕らの小学校は春はバス遠足、秋は徒歩遠足だった。
5年生の春の遠足は毎年、トヨタ自動車工場の見学だった。
スーパーカーブームが低学年ぐらいだったから、僕らはみんな自動車が大好きだった。
毎年毎年、5年生になったら自動車工場に見学に行って、記念品のおみやげにプラスチックでできたトヨタ2000GTのモデルカーをもらって帰って来る。
去年、一昨年もそうだった。
ずっとずっとそうだった。
毎年、工場見学に行った学年の男子は後輩の僕らの前でそのカッコいいトヨタ2000GTのモデルカーを自慢げに見せつけるのだ。
よし!僕らもそのカッコいいトヨタ2000GTのモデルカーを手に入れて近所の後輩たちの羨望の眼差しを受けるのだ!
小学校男子のゲスい目論見全開である。
ところがなんと、僕らの学年だけトヨタ自動車工場の見学は中止になった。
新年度が始まった時に聞いた話と行き先が変わってしまったのである。
担任が言うには工場の人たちが行事に出ていて対応できないのだとか。
夜のニュースで、おじさんたちが赤い鉢巻をして拳を上げていた。