農業も切り捨てた日本
8月21日付毎日新聞「経済観測」
丸紅経済研究所所長 柴田明夫
「日本は農業を捨てたのか」
農林水産省は11日、08年度の食料自給率(カロリーベース)が41%となり06年度39%、07年度の40%から2年連続で上昇したと発表した。コメや小麦の生産は不調だったが、サトウキビの生産増や油脂用大豆の輸入減が寄与。
食料自給率は、国内で消費している食料のうちどの程度国内生産で賄ったかを示す数字である。60年代に80%近かった自給率はその後ほぼ一貫して低下、98年には40%と半分になった。米国の128%、フランス122%、ドイツ84%、英国70%と比べ極端に低い。
主要国における食料・農業の位置づけを日本と較べると改めて驚かされる。人口1億2700万人の日本の穀物生産量は1000万㌧程度なのに対し、人口6000万人の英国は日本の3分の2の国土で3000万トンの穀物を生産している。工業国のイメージのドイツは8200万人の人口で5500万㌧の穀物を生産している。日本の10倍以上の人口を抱えた中国の穀物生産は日本の50倍強の5億トン強だ。しかもこれら諸国の国内総生産(GDP)は世界上位5カ国に入る経済大国だ。長年、商社食料部門で穀物取引に携わってきた友人によれば「農業をおろそかにする国は滅びる」という考えが欧州には根付いているという。欧州の国々は農業を犠牲にしてまで経済大国にはなろうとはしなかった。改めて日本という国を振り返ると、ひたすら工業化による経済大国を目指す一方、「農業」を切り捨ててきたのではないかと疑いたくなる。それは自然に対する畏敬(いけい)の念や他人に対する思いやりの文化を失ってきた道でもある。現在の世界的な経済危機と食糧危機は日本にとって「農業」を根本的に立て直す好機と言えよう。
そうです。切り捨ててきたのです。
教育を切捨て、農業を切り捨て、今また老人を切り捨て、残してきたものは
何だったか。
丸紅という巨大商社にも責任がないとは言わせない。
しかしそれはおいといて、専門家の見解としてうけとめたい。
日本の食糧生産を担ってきた農山漁村もまた切り捨てられ、限界集落と言われる
地域は広がりつつある。
「農業をおろそかにする国は滅びる」であろう。
しかし、農山漁村は食糧生産の潜在的能力はまだ失っていない。
この国の流れを今変えればなんとかなると思わないでもない。
そのためには、
政権を変えるのではなく政治を変えるのだ。