毎日新聞朝刊の2面に「時代の風」というコラムがある。毎日新聞の人ではなく外部の人の寄稿によるものであるようだ。2月10日付のこの欄に、西水美恵子氏という方がこのタイトルで寄稿している。その一部を紹介させていただく。
2011年3月11日、氏は外国にいたようである。日本に出張で来ていた部下(女性)から電話がかかった。その内容と氏の感想は、
「今、帝国ホテルに向かって歩いている・・・ミエコの同胞は素晴らしい・・・強い余震が来る中で・・・誰もかれもが落ち着き払って・・・まわりの人を思いやって・・・助け合っている・・・こんな民族が住む国がこの世にあったなんて・・・信じられない・・・ミエコの国はすごい・・・」
格差が社会の不安呼ぶ発展途上国はもとより、米国のような先進国でさえ、自然災害の後には必ずと言っていいほど略奪や暴動などの人災が突発する。彼女は、その恐ろしさを身をもって知っていた。だからこそ、わが同胞の行動に深い感銘を受け、魂が揺さぶられたのだろう。深夜の電話からしばらく、ワシントンに戻った彼女から「これが世銀やIMF(国際通貨基金)はもとより世界中を駆け回っている」と、一通のメールが転送されてきた。
「10things to learn from Japan(日本から学ぶ10のこと)」と題したそのメールに、こうあった。
1 The Calm(平静)悲痛に胸を打つ姿や、悲嘆に取り乱す姿など見当たらない。悲しみそのものが気高い。
2 The Dignity(威厳)水や食料を得るためにあるのは秩序正しい行列のみ。乱暴な言葉や、無作法な動作などひとつとてない。
3 The Ability(能力)例えば驚くべき建築家たち。ビルは揺れたが崩れなかった。
4 The Grace(品格)人々は、皆が何かを買えるようにと、自分に必要なものだけを買った。
5 The Order(秩序)店舗では、略奪が起こらない。路上では、追い越し車も警笛を鳴らす車もない。思慮分別のみがある。
6 The Sacrifice(犠牲)50人の作業員が、原子炉に海水をかけるためにとどまった。彼らに報いることなどできようか?
7 The Tenderness(優しさ)レストランは値を下げる。無警備のATM(現金自動受払機)はそのまま。強者は弱者を介助する。
8 The Training(訓練)老人も子供も、すべての人が何をすべきか知っていた。そして、すべきことをした
9 The Media(報道)崇高な節度を持つ速報。愚かな記者やキャスターなどいない。平静なルポのみがある。
10 The Conscience(良心)停電になった時、レジに並んでいた人々は、品物を棚に戻し、静かに店を出た。
真のインスピレーションを感じる。日いずる国で起こっていることに。(著者和訳・西水氏)
西水美恵子氏は元世界銀行副総裁だそうである。すごいキャリアなのだ。
これほどの内容のものが世界中を飛び回っているとなると、半端な気持ちでは生きていられなくなる。我々日本人一人ひとりのことをこう言っているのだ。日本政府のことではない。
結局一番お粗末だったのは、政治家や高級官僚だったということか。政党を立ち上げるにしても政党助成金を目当てに数をそろえるとか、復興のための財源をかすめ取って他に流用しようとしたり、いまだに責任をとろうとしない恥知らずの経営陣、御用学者などのことも世界中に知らしめねばなるまい。
(青字の部分引用)