去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子
一本のレールの上や去年今年 大森扶起子
よいお年を
来年は亥年
亥は猪(イノシシ)である。勢いがよい。猪突猛進(ちょとつもうしん)と言うが小回りが利かぬ。「猛進」することなかれ。(というが、ほんとは俊敏で賢いという…筆者注)
☆ 昭和22年(1947年)
物情騒然。ゼネストで吉田内閣退陣へは、マッカーサー司令部の介入で突然中止。「二歩交代、一歩前進」の放送。6月、片山哲社会党首班の内閣成立。公職追放、財閥解体、集中排除、体制の分離進む。
☆ 昭和34年(1959年)
皇太子・美智子妃ご成婚。新幹線起工式。エネルギー革命で各炭坑閉山。代表格の三池炭坑はドロ沼闘争へ。
【物故】永井荷風、高浜虚子、北大路魯山人。
☆ 昭和46年(1971年)
ニクソン・ショック。8月15日ドル・金交換停止。IMF体制から変動相場へ。円切り上げ。株式大暴落。キッシンジャー電撃訪中。
【物故】松永安左エ衛門、徳川無声、志賀直哉、内田百。
☆ 昭和58年(1983年)
英国選挙で保守党サッチャー女史大勝。左傾化の反動。米国レーガンとならび中曽根政権への影響大。
【物故】小林秀雄、寺山修司、羽仁五郎。
☆ 平成 7年(1995年)
阪神大震災。オウム真理教事件。村山連立政権動揺の中、野党自民党の総裁公選。三つどもえとなり河野洋平総裁が降り、橋本龍太郎、小泉純一郎の決戦。小泉は惨敗するが屈することなく再起を期す。
近鉄野茂投手、大リーグ入りを目指しドジャース入り。対メッツ戦で初白星。日本シリーズのヤクルト対オリックスはヤクルト。
【物故】渡辺美智雄、向井淳吉、ディーン・マーチン、岡田栄次
さて次の亥年は?
以上は、『毎日新聞』12月26日付 コラム「経済観測」より
「人間は哀れである」
(東海林さだお著「ヘンな事ばかり考える男 変な事は考えない女」より)
人間は哀れである
何がどう哀れって、人間に関するすべてが哀れである。
姿、形が哀れである。
体のてっぺんにのっかっている大きな頭があわれである。
二本の足で立っているところが哀れである。
ヒョロッと立って、本人はこれで安定しているつもりだが、後ろからちょっと小突かれればつんのめってしまうところが哀れだ。
せわしなく、息なんか吸ったり吐いたりしているところも哀れだ。
その吸ったり吐いたりを、やめられないところも哀れだ。
たまには呼吸を休みたいと思っても、休むと死んじゃうところも哀れだ。
そうしないと乾いちゃうからといって、ときどきまばたきをしているのも哀れだ。
全身に血液を送らなくてはならないからといって、心臓がポンプで加圧しているところも哀れだ。
加圧も過ぎると、高血圧ということになるから、適当に加減して送らなくちゃ、なんていってるところも哀れだ。
やっていることが一つ一つせこい。
人間の生理とは、せこいことをせこせこやることなのだ。その、せこい生理で人間は生きているのだ。
両足を少しづつ互いちがいにくり出すことによって、移動を行わなけばならないというのも哀れだ。
それを”人間は一歩一歩”なんていってるのも哀れだ。
その足に、靴とかいうのものをはめているのも哀れだ。
体に布をまとっているのも哀れだ。
その布にデザインというものを施しているのも哀れだ。
ずいぶん人間の哀れを書きつらねてきたが、人間はそのことに気がついていない。
自分は哀れじゃないと思っている。
哀れむどころか、(人間、この偉大なるもの)なんて思っている人もいる。
……中略……
わたくしが「ひょっとしら、人間は哀れなのではないか」
と気づいたのは、いまを去ること四十数年前、すなわち思春期の頃であった。
十五,六歳の少年であったわたくしは、ある出来事に遭遇したのである。
……以下略……
大変な本です。人間の哀れ、人それぞれ、まだまだありそうです。もっと読みたいでしょうが、これ以上の引用はやめます。東海林さだおはマンガも書く思想家と言ってもよい。買って読んで下さい。
東海林さだお著「ヘンな事ばかり考える男 ヘンな事は考えない女」文春文庫 476円+消費税
【 「労働ビッグバンと再チャレンジ支援」という名のペーパーが経済財政諮問会議で議論されている。民間議員4氏が連名で提案したものだが、これほど強引でバランス感覚に欠ける主張も珍しい。これが実現すればわが国の貧富の格差はさらに広がるに違いない。
ペーパーは前文で「複線型でフェアな働き方を実現させ働く人ひとりひとりが『働くことへの誇り』を持てるようにし、同時に企業活力を増強させるよう関連制度を包括的に見直す必要がある」とうたっている。一見公正であるようだが、真の狙いはそんな生易しいものではない。
現に中心的役割を果たしている八代尚宏氏は「日本のような正社員と非正社員との身分格差は賃金の年功制や過度の雇用保護から発生している。仕事能力にかかわらず雇用が保護されている正社員の既得権の見直しが重要である」と主張している。つまり、労働の規制緩和の名のもとにさらに労働者の非正規化を推進しようという狙いなのだ。
これは労働現場の実態を全く無視した議論である。規制が緩和されれば「転職の自由度」が高まり、より効率的な労働市場が確率するというが、それは働くものが経営者と対等の立場に立ってこそ可能なのだ。しかし、現実は天地の差がある。そのために労働者に団結権が、経営者と対等に交渉できる道が開かれたのである。そして、労使交渉で勝ち取ってきたのが労働関係の規則なのだ。
ビッグバンがまかり通れば経営者は正社員をもっと解雇し、コストの安い非正規社員を増やすであろう。そうなれば労働者の生活は低下し、子供を産むことも難しくなる。極端に言えば、社会崩壊へつながる契機となりかねない。実現を阻止するよう労働組合の奮起を促したい。 (邦) 】
12月13日付『毎日新聞』 経済欄コラム「経済観測」である。
極めてまっとうな意見というか、今日の日本の労使状況に危惧を抱きつつ述べられていると思う。
日本国憲法、労働基準法、教育基本法が機能していれば何とか国民の生活はぎりぎりのところで守られるのではないか。と思ってきたが、すべての面で危うくなってきた。
権力を縛る法律はすべて換骨奪胎し、形骸化し、骨抜きにしようとしている。
労働者が国を背負う。労働者が生き生きと明るく生きてこそ国である。
日本が近代国家として存続しうるかどうか、瀬戸際であろう。
【 ブッシュ大統領が先制攻撃で始めたイラク戦争への批判が、米国内で高まっています。
大統領にとって、小泉首相のいち早い戦争支持は心強かったでしょうが、何よりの後押しとなったのは、「ラブ・アメリカ」現象と報道された愛国心の高揚だったように思います。
愛国心は、国民をまとめるテコとなります。しかし、時にはそれは、国を戦争に駆り立てもます。65年前、日本はなぜ太平洋戦争を始めたのか。愛国心教育が法制化されようとしている今、考えてみませんか。 (湯谷)】
『毎日新聞』社会面に「デスクです」という小さなコラムがあります。12月10日付のものです。
控えめながら、「愛国心」というものが声高に叫ばれるとき、そのきな臭さのもたらす結果を忘れてはいけない、ということを、訴えているように思います。昨日の「発信箱」と同じように、記者のみなさんには、今のうちに、書けるうちに、もっともっと本音の記事を書いてほしい、と願っています。