昨日紹介した堤未果氏の著書、岩波新書「ルポ貧困大国アメリカ」のごく一部引用させていただく。
「おちこぼれゼロ法」という名の裏口徴兵制策
二〇〇二年春、ブッシュ政権は新しい教育改革法(「おちこぼれゼロ法」No child Left B ehind Act)を打ち出した。
「アメリカでは高校中退者が年々増えており、学力テストの成績も国際的に遅れを取っている。学力の低下は国力の低下である。よってこれからは国が教育を管理する」
どうやって管理するか?
競争を導入する。
どんな競争を?
全国学力テストを義務化する。ただし、学力テストの結果については教師および学校側に責任を問うものとする。よい成績を出した学校にはボーナスが出るが、悪い成績を出した学校はしかるべき処置を受ける。
例えば教師は降格か免職、学校の助成金は削減または全額カットで廃校になる。
競争システムがサービスの質を上げ、学力の向上が国力につながるという論理だ。
教育に競争が導入されたことにより教師たちは追いつめられ、結果が出せなかったものは次々に職を追われた。だが、この法律の本当の目的は別のところにあったと言われている。
「個人情報です」
そうキッパリ言い切るのはメリーランド州にあるマクドナウ高校の教師、マリー・スタンフォードだ。
「おちこぼれゼロ法は表向きは教育改革ですが、内容を読むとさりげなくこんな一項があるんです。全米のすべての高校は生徒の個人情報を軍のリクルーターに提出すること、もし拒否すれば助成金をカットする、とね」
生徒の個人情報とは、名前、住所、親の年収および職業、市民権の有無そして生徒の携帯番号だ。個人情報漏洩に非常に敏感なアメリカの学校が今までずっと守ってきたその姿勢を崩したものは何だったのか。そのことを聞くとこんな答えが返ってきた。
「格差ですよ。裕福な生徒が通う高校はもちろん個人情報など出しません。それどころか校内に軍服をきて武器を携帯した兵士が出入りするのさえ『武器持ち込み禁止原則』によって禁じています。ですが貧しい地域の高校、州からの助成金だけで運営しているところは選択肢がないため、やむなく生徒の個人情報を出すことになるんです」・・・・略・・・・
米軍はこの膨大な高校生のリストをさらにふるいにかけて、なるべく貧しく将来の見通しが暗い生徒たちのリストに作り直す。そして・・・・略・・・・軍のリクルーターたちがリストにある生徒たちの携帯に電話をかけて直接勧誘するしくみだ。
勧誘条件は大きく分けて五つある。(一)大学の学費を国防総省が負担する、(二)好きな職種を選ぶことができ、入隊中に職業訓練も同時に受けられる(三)信念と違うと感じたときは除隊願いを申請できる「良心的兵役拒否権」の行使が可能、(四)戦地に行きたくない場合は予備役登録が可能、(五)入隊すれば兵士用の医療保険に入れる。
こういう約束は反故にひとしいことはこのルポをさらに読むと良く分かる。
1973年に徴兵制は廃止し、志願制に切りかえたが「経済的な徴兵制」として貧しい若者を飲み込んでいく。
この引用の前半部分を読んで、おや!と思わないだろうか。
最近の日本の教育政策は全くこれと同じではないか、と。
ねらいは同じだ。
ぜひともこの一冊よんでみてほしい。735円である。
ターゲットになっているのはあなたか、あなたの子か、あなたの孫か。
米軍が沖縄に横須賀に、日本の各地に基地をおいているのは断じて日本を守るためではない。イラクでアフガンで自国の主張、世界戦略のために戦争をしている。それでも自国の若者を戦争で死なせたくないとは思うだろう。その肩代わりをする兵士がほしい。そのために日本に改憲を迫る。
あなたは憲法を変えたいか。