日が落ちて また寒さが戻ってきた。
風と雨である。
ストーブの火を眺めながら、ぼうとする。
火というものは何もかも燃えてしまえという気を誘うが、
炎の中からまた何かがあらわれてきそうな気もする。
何とたゝかふ心ぞ暖炉燃ゆるとき 林原 禾井
暖炉燃ゆわれにかへらぬものいくつ 鈴木真砂女
ブッシュ政権が強行したイラク戦争はすでに6年目に入り、米兵の死者が4千2百人、負傷者が3万人。戦費は6870億ドル(約62兆円)に達した。
イラクの人々の死者は民間人が大多数、20万人近い死者か、といわれる。よくわからない、というのがすごい。
アメリカもこれ以上若者を死なせることはできない。
が、アメリカという国は、戦争で死ぬための要員を用意する仕組みを作り上げた。
ブッシュ政権のこの大きな負の遺産をオバマ新大統領は引き継がねばならない。
以下、岩波新書「ルポ 貧困大国アメリカ」(堤未果 著 2008年刊)の一部を引用させていただく。
《 二〇〇二年春、ブッシュ政権は新しい教育改革法(「落ちこぼれゼロ法」No Child Left Behind Act)を打ち出した。
「アメリカでは高校中退者が年々増えており、学力テストの成績も国際的に遅れを取っている。学力低下は国力の低下である。よってこれからは国が教育を管理する」
どうやって管理するか?
競争を導入する。
どんな競争を?
全国一斉学力テストを義務化する。ただし、学力テストの結果については教師および学校側に責任を問うものとする。良い成績を出した学校にはボーナスが出るが、悪い成績を出した学校はしかるべき処置を受ける。例えば教師は降格か免職、学校の助成金は削減または全額カットで廃校になる。
競争システムがサービスの質を上げ、学力の向上が国力につながるという論理だ。
教育に競争が導入されたことにより教師たちは追いつめられ、結果が出せなかった者は次々に職を追われた。だが、この法律の本当の目的は別のところにあったと言われている。
「個人情報です」
そうキッパリ言い切るのはメリーランド州にあるマクドナウ高校の教師、マリー・スタンフォードだ。
「落ちこぼれゼロ法は表向きは教育改革ですが、内容を読むとさりげなくこんな一項があるんです。全米のすべての高校は生徒の個人情報を軍のリクルーターに提出すること、拒否したら助成金をカットする、とね」
生徒の個人情報とは、名前、住所、親の年収および職業、市民権の有無、そして生徒の携帯電話番号だ。
個人情報漏洩に非常に敏感なアメリカの学校がいままでずっと守ってきたその姿勢を崩したものいは何だったのか、そう聞くとこんな答えが返ってきた。
「格差ですよ。裕福な生徒が通う高校はもちろん個人情報など出しません。それどころか構内に軍服をきて武器を携帯した兵士が出入りするのさえ、「武器持ち込み禁止原則」(No Weapon Policy)によって禁じています。ですが貧しい地域の高校、州からの助成金だけで運営しているところは選択肢がないため、やむなく生徒の個人情報を提出することになるんです」 》
以上 なぜ引用したかお判りであろう。
一方で、裕福な生徒が通う高校は個人情報などは出さないしくみのようだ。
こうして軍は膨大な高校生の個人情報を手に入れる。
特別の任務とノルマを背負った軍のリクルーターはこの中からさらにふるいにかけリストを作る。
なるべく貧しく将来の見通しが暗く、しかし大学に進学する希望を持っていたり、まじめで身体の頑健な優秀な兵士となる資質を持った生徒に携帯電話をかけ、直接入隊を勧誘する。美味しい条件を掲げ甘い言葉でつるのである。
大学の学費免除、除隊願いも受け付けるとか兵士用の医療保険への加入など。
入隊した後の訓練はすさまじいもののようだ。人間性を徹底的に否定し、殺人マシーンとして育てられる。
そしてイラクへ。
人間性を破壊された米軍兵士が捕虜を拷問することなど不思議でもなんでもない。
彼らも無残な犠牲者である。
そして日本はどうする。ブッシュのいうがままに追随してきた日本もまた負の遺産を清算しなければならないのではないか。
兵役の部分を除いて、日本の政府与党、文部科学省の教育分野での「改革」と称する政策はそっくりそのままである。
東京都や大阪府の知事までその尻馬に乗る。
愛国心などをいい、憲法の改悪をいい、教育の中身や条件を変え、やろうとしていることは何か。
世紀の愚挙というか愚策といおうか。政府の画策している定額給付金について大谷昭宏氏が1月19日付「ニッカンスポーツ」のコラムで面白いことを書いている。抜粋だけど拝借して紹介するので読んでみてほしい。
悪政「給付金」を楽しもう 大谷昭宏
金はだれだって欲しい。だけど謂れのない金を押しつけられるほど気分の悪いものはない。
天下の悪政といわれる給付金は国民の7割がそんなものいらないと言っているのに、どうやらゴリ押しで無理矢理ポケットに突っ込まれそうな気配だ。だったら、ここは大阪人らしくこんな政治をおちょくりながら楽しむ、いい方法を考えよう。
先日、橋下知事が大阪は年収400万円以上の方に給付金の受け取りを辞退してもらって、学校の耐震化工事に使いたいと提案。こりゃ、いいアイデアだと思っていたら資産ン100億といわれる総務大臣に「自治体にビタ一文使わせない、俺はとんかつか鴨鍋を食う」と一蹴されてしまった。
だけどこれでめげる知事ではない。給付金を受け取る府民から寄付を募り、小中学校にパソコンやカメラを導入、外国の学校との交流に繋げたいと言い出した。それもいいけど話がだんだんせこくなってきている気がする。
私のように金はほしい、だけど意地でもこんな金は受け取りたくない。と言って辞退した金をお国に持ってかれるのはケタクソが悪いと思っている人は山ほどいるはずだ。
そこで大阪がこの際、大風呂敷を広げて国をギャフンと言わせてほしいのだ。
名称は「大阪依怙地基金」でもいいし「大阪イケズ基金」でもいい。市町村が本人宛に給付金支払いの通知を出す段階で、基金の振り替え承諾書と、領収書を同封するのだ。寄付をしたい人は領収書と承諾書を送り返すことによって基金への寄付を申し出たことになる。
こうしておけば辞退したわけでなく、一度は確かに受け取ったのだからお国が横取りすることはできないし、自分がもらった金なんだからあとは寄付しようと何に使おうとガタガタ言われる筋合いはない。こうして依怙地資金だかイケズ資金への寄付を募るのだ。ただしいまのままでは寄付するにもメニューが少なすぎる。学校の耐震化も大事だし、小中学校の海外校との交流もいい。だけど、そのほかに「周産期医療施設のNICUの拡充」「派遣切り、雇い止め労働者への就労斡旋」「大和川の浄化」といったきめ細かい寄付項目を作ってほしいのだ。
・・・・中略・・・・。
ただ寄付するだけでは面白くない。そこで何十何百と用意されたメニューのなかで、どれに府民がたくさん寄付してくれたかトトカルチョをやるのだ。たおえば1位から20位までを全部当てた人には10万円といった具合に賞金を基金から出す。たしか富くじの許認可も寄付行為の承認も知事権限、国は口出しできないし、こんなおもろい仕組みを指をくわえて見ているしかないのだ。 ヘッヘッヘ。ざまあ見ろ。それにこの制度、煩雑(はんざつ)じゃないところがもっといい。(ジャーナリスト)
はっきり言って私は橋下という弁護士資格を持っているというタレント知事を好きではない。何ぼのもんか知らんが教育問題などについて具体性のない右翼的プロパガンダの教条的な悪罵を現場に投げつけるだけである。
しかし、大谷氏は違うと思う。現場に精通し、いつも庶民の立場で見つめている。
賛同する。