雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

小鳥の巣箱

2012年05月11日 | ポエム



▲これが今年の新築物件。捨てられていた味噌樽を使った巣箱。
 見出し画像は庭のツルバラ。切ったときは、ほとんど白だった。


 小鳥の巣箱
 今年のゴールデンウィークは、後半の4日間、仕事が全て休みとなった。
 しかも熊本は、毎日が行楽日和で、趣味の園芸家としては、雨が降らず、一日作業が出来ることがうれしい連休だった。また仕事場のある天草は観光地なので、地元の景気に大きな影響がある連休の晴天は単純にうれしい。ただ予想以上に晴れが続いたので、4日の夕方、熊本市内の自宅から実家の仕事先の上天草市まで、わざわざ花の水やりに行った。(近所の人にお願いするのを忘れたのだ。)
 3日と4日の二日間は、自宅の庭まわりの掃除や園芸作業を行った。朝は肌寒く上着を着て作業を始め、どんどん気温が上がり、すぐにまず上着を脱ぎ、ポロシャツも脱ぎ、半袖のTシャツ1枚となった。風がさわやかだった。
 5日は、母黌の濟々黌の野球部の公式戦があるというので、朝から熊本城の近くにある球場に出かけた。途中にあったわずか数百メートル足らずの急な坂道にも足が重くなる我が身に較べて、全員頭髪を青々と剃り上げ、常に全力で走り回る高校生のプレーは見ていて清々しかった。試合は二度先制勝ち越しをされ二度追いついたが、終盤8回に3点入れられて負けた。もう一つの楽しみである黌歌斉唱も無かったが、十分野球観戦の魅力を堪能した。夏の活躍が楽しみだ。
 自宅に戻り、3時のオヤツを食べてから、南阿蘇村にある山小屋に向かった。一人で出かけた僕を出迎えてくれたのは、巣箱を出入りするシジュウカラ。もう20年近く前に、僕が自作した巣箱には、毎年のようにシジュウカラが営巣して、何回かは巣立ちも確認した。巣立ったばかりの巣箱の横にある電線にずらっと5、6羽並んで逃げず、見上げる僕に巣箱のお礼を言ってくれているように勝手に想像した。今年も親鳥が虫をくわえて穴に入り、糞らしいものをくわえて、穴から出ることを繰り返しているので、すでに雛が孵って子育て奮闘中らしい。
 今年新たに作った小さな味噌桶の廃物利用した巣箱を新たにかけた。
 翌日は、友人一家と関係者が昼前からバーベキューをしに訪ねてくるので、僕は一足先に来て、泊まりがけで掃除や草刈りをした。夜には、唐津から妹夫婦も泊まりに来た。一番にお風呂に入った妹が風呂場で大きなムカデを発見。自然が豊かということは嫌な出会いもある。
 連休最終日の朝は、名前を知らない鳥の美しいさえずりと、昨日田植え前の田に姿を見せていたキジの「ケーン、ケーン」と鳴く声で目が覚めた。幸福なモーニングコールだ。それからうつらうつらと微睡みながら、いい加減外も明るくなって「もう7時か8時かしらん」と思って、携帯電話で時刻をみたら6時を過ぎたばかり。これも歳をとった証拠だ。
 7時過ぎには3人とも寝ていることが我慢出来ずに起きだして、50代の3人で早起きを笑った。シジュウカラは朝から頻繁に出入りを繰り返している。驚いたのは、昨日かけたばかりの巣箱に、スズメの夫婦がマイホームの物色に来ていたことだ。昼前に見ると、巣作りを決断したのか藁をくわえて出入りしている。丸い樽型の新築物件は、気に入っていただけたようだ。
 昼前には、友人一家と関係者、そしてカミさんと長男がやってきて、総勢17、8名となり急に賑やかになる。我が家とは、お互いが結婚する前から知っている長い付き合いで、友人夫婦の男3人の子ども達は、当然生まれてすぐから知っている。
 この山小屋も建てて22年になる。友人夫婦の3人の子どもと僕の長男と長女が小さい頃は、ここで一緒に遊び、バーベキュウーよくやった。しかしその日は、材料の買い出しから炭おこし、料理もすべて子ども達が計画実行し、親たちは、鳥の雛のように目の前の皿に若い人に提供される肉や野菜を食べるだけだ。お酒にも気を配ってくれて、無くなる前に次から次にサービスしてくれる。歳をとるのも悪くない思いがした。
 お酒を飲み、煙草を吸うようになり、図体は親よりもはるかに大きくなっても、僕の長男と同様に、まだ全員が親と同居している。
 巣立っても近くの電線に並んでとまっていた、あの時のシジュウカラの雛たちの姿と重なった。
(2012.5.11)
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