イタリア人の友人とは普通、1週間ぐらい前に会う約束をする。
会うのは大抵金曜日か土曜日。
「明日、夕食に招待したいんだけど、来れる? 他の友だちにも聞いておくから。」
と職業訓練時代の友人から連絡があった。
平日なのに珍しい、しかも前日に連絡してくるなんてもっと珍しいと
思ったけれど、そう気にせず、ワインとお菓子を用意して出かけた。
お手製のパセリソースをかけた牛タンのハム、
牛肉に赤ワインと香料を加えて作られるブレザーオラというハム、
3時間も煮込んだ骨付き牛肉のローストに美味しい赤ワインをご馳走してくれた。
職業訓練が終わって1年半経った今でも彼女は満足する職に就けていない。
短い契約の仕事でつなぎ合わせていた。
そういえば、日本に帰っていたから今は何の仕事をしているのか聞いてなかったし、
タイミングをはかって聞いてみようと思っていた。
夕食が終わりかけると同時にチャイムがなった。
「来た来た。今から仕事のミーティングをするから。」
家に入ってきた40代ぐらいの黒髪を無理に金髪に染めた
イタリア人女性は大きな黒いバックを抱えていた。
やけにテンションが高く、おしゃべりだった。
かばんの中から青い布を出してテーブルの上に広げたと思ったら
慣れた手つきでいろんな種類のボトルを取り出して綺麗に並べ始めた。
自分の発するオーラで一気に場を飲み込もうとしている感じがした。
すぐにピンときた。
今日のメインはこれだったのか。
この時点で夫に目配せをすると平然とした態度で私を見たが
口元はきゅっとつむんであった。
この手の商法には慣れていた。
全種類試してみたけれど、どれもこれもやけにハーブの香料がきついなと感じた。
初めから興味を示さなかったのが気に食わなかったのか、販売員は、
「日本人は世界各地で大金をはたくのに、
こんなに上質で信頼もあって、価格も百貨店にあるブランド化粧品、
そう○○堂に比べたらぐんと安いのにどうして今日注文しないのよ。」
他の友だちはナイトクリームだのオイルだの注文していたので
何も買わないのが気に入らなかったようだ。
しゃべり続けて夜の11時にもなれば、最初のテンションなんて維持できる
訳でもなく、ご機嫌斜めで押し売りされてもなと思いつつ動じなかった。
商品の説明をしているときにアジア人の悪口を言って自分たちの商品が
最高だって主張しても、イタリア人の年配の方には通用するかもしれないけど
私には通用しない。6年間同じ文句を唱え続けてる感じがしたし、
上手な販売員ではなかったなと思う。
商品に関して言えば、悪くないなと思えるのもあったけれど
喉から手が出るほど欲しいとは思わなかった。
結局、私の友人はこの仕事を始めるらしく、
総額で150ユーロ注文すると、クリームと目元周り用クリーム、
そしてジルコニアのペンダントが貰えるそう。100ユーロのボーナスもあるとかで。
この業界には不況はない、とか
ターゲットは年配の方、とか
やる気次第で収入アップ、とか誘い文句には甘い香りが漂う。
仕事がないからマルチ・レベル・マーケティングを始める友だち、
はまりすぎないでほしいと思う。
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アルプスで採取される自然の恵みハーブ。
10年前に、この手の商法に燃え上がっていた友人から
ハーブって何か定義してみてって言われたのを思い出しました。
あやふやにしか定義できなかったので一気に勧められてしまったのでした、はは。
ハーブのサプリを試したけれど、吐き気がして気持ちが悪かったので断ると
友だち関係にも亀裂が・・・。だからこの手の商法は苦手なのです。
ちなみに夫婦共同リサーチによると、
日本では法人化してあり店舗もあります。
メディアにも取り上げられていてセレブやモデルもご愛用だとか。
悪徳ではありません。イタリアではマルチ商法が採用されていますが
高齢のターゲット層が理由にあげられるのと、イタリアでは
調理器や掃除機などを販売するマルチ商法が結構成功しています。
イタリア製品ではありませんが値段も日本よりは安いですし。
国によって販売戦略が違うようです。