山形のホリデイマタギ日記

山菜とキノコと魚を採って遊ぶ年寄りの冷や水日記

深山幽谷の世界で

2020年05月03日 | 山菜採り
 多くの方々が「ステイホーム」とか「籠城じゃ!」などと言っている中恐縮なんですが、マタギの生業は、山仕事なので、こそっと出掛けてきました。
 指標生物でもなく観天望気でもないんだけど、身の回りの生き物たちが「そろそろだよ」と教えてくれるのです。その一つが、昨日のワラビ畑。そして、もう一つがこれです。

我が家の玄関のフジ棚

これが咲き始めること = ある場所の山菜が真っ盛りになる。これは、30年以上続いている自然界の法則みたいなもので、ずれたことがありません。2カ所あるんですけど、そのうちの一つに出かけることにしました。
 庄内地域の某河川です。この川、小河川ながら山菜やイワナが豊富で、記憶と記録とを振り返ってみると30年以上前から通い続けてきたことになります。地元のお年寄りはもちろん、マタギの母や妻も遊びに行ったことがあるくらいお手軽な川だったのですが、十数年前に車の通行が出来なくなってしまい、足が遠のいていました。

 桃源郷のようであった過去の景観が忘れられず、思い立って足を運んだのが昨年。かつて、母や妻も通うことが出来た山菜道は崩れ落ちてしまい、”沢屋”しか遡行することが出来ない川に変貌していました。妻にこのことを話すと、「ああ、よかった!」だと。以前の山菜道ですら、かなり怖かったらしい。黙って付き合ってくれていたわけね。ありがと。

崩れかけた山菜道

 今回は、T氏と川に入ったのだが人の気配は完全にゼロ。代わりに、獣の気配はプンプンします。

これはカモシカ君だけど、他にもいろいろいましたよ。
 そうして、30年前から通い続けている広場へ。

ニリンソウとコゴミの世界


アイコは出始めです


相棒は夢中になって収穫中

 何を採っているかというと、これです。

赤コゴミ(キヨタキシダ)

この山菜、極めておいしいうえに、乾燥すると何年でも保存がきくという優れもの。メジャーではないけれど、食べたことがある人は、一様に「美味しい!」「ゼンマイより旨い!」と賞賛してくれます。もちろん、我が家でも大人気の山菜です。
 これが、広場一面に出ていました。しかも、ベストタイミング。

リュックが満杯です(私も)

 以前にも書いたけれど、山菜は、人を待っていてくれない。多分、昨日の高温で一気に盛期を迎えたんだと思います。これで、あと1日遅れると、赤コゴミたちは、葉を広げます。
 今回は、すごくラッキーな出会いとなりました。最上のタイミングと最上の品質でした(フジ棚の教えに従ってよかった)。
 このラッキーの要因の一つは、『指標生物』なのですが、もう一つ大きな要因があると思います。それは、「誰も採らないから」ということです。
 山形のような自然に恵まれた土地に生活していたら、この自然の恵みに触れた方が楽しいし、心も暮らしも豊かになると思うんです。だけど、このところ、山の中で人に会うことは、めっきり少なくなってしまいました。山菜を畑やビニルハウスで栽培して売る時代だから、地元の人ですら、わざわざ山奥まで入る気にはならないのかもしれません。多分、そういった理由が山菜道を荒廃させ、人と自然とを更に遠ざけてしまっているのだと思います。
 でもね、この地は、しがらみに右往左往させられる世間とは一線を画す、豊穣の世界なんですよ。なんと言っても、相手は自然だけです。自然と自分を見つめるだけで、極上の知恵比べと力比べとを楽しめます。
 この喜びを年寄りマタギだけで独占してしまっていいのかな。せめて、この深山幽谷の豊かな恵みに、ちょっとでも興味を持ってくれて、足を踏み入れてくれる人が増えたら嬉しいんですけど(と言いつつ、家族からも敬遠されてますけどね)。

 チャンチャン


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