太宰忌や馴染みの店の隅の席 ひよどり 一平
(だざいきやなじみのみせのすみのせき)
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昭和23年6月13日、小説家太宰治が玉川上水において、愛人と入水自殺ををした。太宰治は39歳。
14歳の私にとって、とても衝撃的な事件であった。
そのことがあって以来、私は太宰治の作品を貪り読んだ。
「死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目が織り込まれていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。」
上は太宰治の第一創作集『晩年』の書き出し。当時の一平少年は、すっかり嵌ってしまったのだ。
毎年の6月19日、三鷹の禅林寺の墓前において、桜桃忌が修せられている。
現在はほぼ禁酒状態の私なのだが、桜桃忌の前後だけは、禁酒の戒めが緩んでしまう。
困ったものだ。