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春愁と秋思(土井卓美)

2011年05月14日 21時22分36秒 | Weblog
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春のそこはかとない哀愁というか、もの憂い気分のことを「春愁」といいます。
春は万物の芽吹きの季節であり、のどかでゆったりとした気分に包まれるのですが、その中でさしたる理由もなく、ふと心の中を愁いの影がかすめることがあります。
「秋思」という言葉もありますが、こちらは愁いの根拠がややはっきりしているといわれています。
この摑みどころのない春愁については既に千二百年も前から文献にも登場し、以降も詠い継がれているのだから日本人にとっては春とは縁の深い感情であることも確かなようです。
「うらうらに照れる春日に雲雀あがり情(こころ)悲しも独りしおもへば」(大伴家持・万葉集巻十九)
四季夫々に喜びや悲しみや愁いを覚える感受性の豊かさときめ細やかな感性は日本民族の世界に誇れる特性だと思います。

本来の春愁とはやや趣を異にして甚だ恐縮ですが、今現在の愁いは原因もかなりはっきりしていて、その意味では秋思の要素を多分に含むものですが、かなり深刻です。
東日本大震災に原発事故が重なり、菅内閣の無能ぶり、円高の継続、浜岡原発の停止による電力不足懸念、個人的には肩の故障、夏風邪と軽めではあっても花粉症、阪神と株価の低迷と全くそこはかとなき愁いどころの騒ぎではありません。
しかし時ほど確かな治療法はなく、徐々にでも少しでも早く愁いの薄まることを願う今日この頃の状況と心境ではあります。