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ゆめ未来     

遊びをせんとや生れけむ....
好きなことを、心から楽しもうよ。
しなやかに、のびやかに毎日を過ごそう。

「天上の葦」  闘えるのは火が小さなうちだけです。

2018年05月06日 | もう一冊読んでみた
天井の葦(上・下)/太田愛  2018.5.6  

    2018年版 このミステリーがすごい!
    国内篇 第18位 天上の葦(上・下)


上巻 p436 下巻 p373。 力作です。
先の戦争の歴史が、もう少し簡略に記述されていれば(ミステリだから)、「このミス」の順位はもっと上がっていたかも知れないと強く感じました。
しかし、著者はこの部分も強く主張したかったのでしょう。だから詳細にわたってしまったのでしょうか。

ぼくには、ランキングの順位に関係なく面白かった。
ぼくたち、団塊の世代は、これからの子供たちに何が残せるのか。
最近の日本の社会状況を考えると、余り幸せな未来を約束できないのではないかという気がします。

 『表の顔』と『裏の顔』ってやつだ、表ではこんなご立派なコンセプトの報道番組をアピールし、その実、裏では児童ポルノを愛好する唾棄すべき変態。有名人が転落するのを見るのが大好きな人間たちが蜜に群がる蟻みたいに押し寄せて騒ぎ立てるはずだ。特にジャーナリストって人種が嫌いな奴らは情熱的に叩きまくるだろうね。一方、報道界の人間に対しては、こういうことをやろうとすれば、こういう目に遭うということを、最も端的に思い知らせることができる。正光の言うとおり、立住は格好の見せしめになる

 大手メディアがスポンサーや時の政権の意向を忖度して黙殺する事象を正面から報道することを社是としている。権力による横暴は、それを報道し批判するメディアがなければ、起こっていない出来事になるか、あるいは当たり前の事態になる、というのが溝口の基本的なスタンスなのだが、いくら報道し、批判しても視聴してくれる人の数が微々たるものである

歳を取るとこのような言葉、身につまされますね。

 「いた人が、いなくなるということ。仲良しだった同級生、一緒に働いた看護婦、ひとりずつこちら側からいなくなって、『向こう』に行く。いずれいなくなるの、私もね。だから『向こう』に行ったら先生にまた会えるでしょう?」

 もうすぐ死ぬということは、若い頃のことが、恐ろしいほど鮮明に思い出されるということ。

 その良き友人を、時枝は戦後、おそらく一度も捜そうとしなかった。時枝には時枝の戦後があり、連絡を絶つには正光なりの理由があるのだと慮って。

権力は、金に飽かせて時間かけてシンクタンクに御用学者、総力挙げて世論操作を行う嘘をつく。何時の時代も今も。

 前島がうまいのは、一連の真実の中で都合の悪い部分だけを嘘に置き換えているところだ。こうすると大半が真実であるだけに誰でも信じやすい。

 「民主主義は感情の統治って、誰かが言ってましたね」
 「別に今に始まったことじゃない。七十年以上前、日本は米国のメディアを調査して新聞の報道よりも写真の効果が絶大だと分析して、その威力をこう評している。『大衆の理性の力よりも、むしろその興奮に訴えると言う事にある、しかして戦争の母胎となるのは、理性ではなくして、実に大衆の興奮なのである』


ほんのささやかな個人の楽しみさえも奪われてしまう。

 「学生の頃は音楽目当てで喫茶店に通いつめてました」
 その喫茶店も戦争で今はほとんど姿を消してしまっていた。


「相棒」をみていたら、何時もとは異質の物語を感じることがありました。
ひょっとすると太田さんの脚本だったのかなと思います。

      『 天上の葦(上・下)/太田愛/角川書店 』



■朝日新聞 2018.4.29
素性は明かさず主張拡散
JCの姿隠し「宇予くん」/世論と誤認 ゆがむ言論
炎上狙い過激ツイート


「憲法を変えたくないって言ってるヤツはバカ」。
日本JCが姿を隠してこう発信し、後に削除、謝罪した「保守キャラクターツイッター・宇予(うよ)くん」も、その事業(改憲を目指す日本JCの今年の事業計画)の一つだった。

公益社団法人・日本青年会議所(日本JC)がひそかにつくった「保守キャラクターツイッター」の「宇予(うよ)くん」は今年の元日から毎日のように発信した。

自民党改憲案を読んでの感想が『何としても戦争をしたいんだ』だと。間違いなく狂ってるど」
「左翼の論理はメチャクチヤだど。洗脳って怖いど」

憲法について語った一般市民や国会議員、一部メディアの名を挙げ、誹謗中傷を繰り返した。

2月末。日本JCが関与しているのではないかとの疑惑がネット上で飛び交い、日本JCが認めた。

----バズりやすい(注目を集めやすい)ものは?
 「いい意味でバズるのは難しい」 「予算がなければ炎上系で拡散させる」
----ツイッターをどう生かすか?
 「右の発言、毒舌の発言で炎上させる」

検討段階とみられる資料にも「対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う」と書かれていた。

今年に入り、プロジェクトの資料が各地のJCに届いた。
西日本のあるJCは取り合わないことを決めた。
メンバーの男性は内容を読み、疑問を抱いた。
「姿を隠した発信は一方的に意見を押しつけることになる」。
これまでJCは、意見が割れる問題で双方が意見を言い、人々に考えてもらう場を提供してきた自負がある。
「宇予くん」について「注目を集める手法を追い求めるあまり暴走した」と言う。

日本JCで活動経験がある男性は「よく徹夜で議論していた。議論おたくの集団だった」と振り返る。
今回の件は「異論に向き合わない姿勢が根底にあるのではないか」と考える。

ネットメディアに詳しい東京工業大の西田亮介准教授は「政治的主張のある団体が一般の人を装って発信すると、世論の一つと誤認され、無警戒に人々の考えに入り込む恐れがある」と指摘する。
姿を隠して発信する手法は、大量の匿名アカウントで候補者への中傷や支持が拡散された16年の米大統領選で見られた。
西准教授はこうした手法が広がれば、言論のゆがみが大きくなると懸念する。

姿を隠したツイッターで政治的な影響を及ぼそうとした「宇予くん」。
憲法改正推進委員会の男性幹部は取材に「何もお答えできません」と繰り返した。

日本JCは2月末と3月初め、ホームページ上で「特定団体からの発信だと個人レベルでの議論が活性化しづらいと考えた。
企画段階では、憲法改正に関する論点や歴史、愛国心など保守的なことを面白くつぶやき、拡散させるというものだった」と説明。
「宇予くん」の誕生を許した理由は「個人アカウントを使用したことで内部のコンプライアンスチェツクが行き届かなかった」とし、この憲法事業を白紙に戻すとした。
今回、改めて取材を申し込んだが、「回答を控えさせていただく」とした。
 (この連載は伊藤繭莉、大谷聡、金山隆之介、貞国聖子、沢木香織、鈴木春香が担当します)


「宇予くん」問題は、今日的な課題を含んでいると思います。
ぼくは、スマホでなくガラ系のため、この問題の報道を最初みたときは、よく分からなかったが、この朝日の記事を読んで理解することが出来ました。
今時の若者は、宇予くんのあんな汚い言葉遣いが受けるのでしょうか。
ぼくは、きたない言葉遣いの人はあまり信用しないことにしています。


■朝日新聞 2018.5.3
社説/安倍政権と憲法
改憲を語る資格あるのか


憲法施行から70年の節目にあったこの1年で、はっきりしたことがある。
それは、安倍政権が憲法改正を進める土台は崩れた、ということだ。

そもそも憲法とは、国民の側から国家権力を縛る最高法規である。
行政府の長の首相が改憲の旗を振ること自体、立憲主義にそぐわない。

それに加え「安倍1強政治」のうみとでもいうべき不祥事が、次々と明らかになっている。
憲法の定める国の統治の原理がないがしろにされる事態である。
とても、まっとうな改憲論議ができる環境にない。


    統治原理ないがしろ

いま政権を揺るがす森友学園と加計学園の問題に共通するのは、首相につながる人物に特別な便宜が図られたのではないかという疑惑である。

長期政権の下、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」という憲法の定めが、大きく揺らいでみえる。

昨年の通常国会の閉会後、野党は一連の問題を追及するため、憲法の規定に基づいて臨時国会の召集を要求した。
首相はこれを放置し、野党の選挙準備が整っていないことを見透かして、衆院解散に打ってでた。
憲法を無視したうえでの、「疑惑隠し」選挙だった。


    普遍的価値も軽視

この1年、社会の多様性や個人の尊厳を軽んじる政権幹部の言動も多く目にした。

象徴的だったのが、昨年7月の都議選の応援演説で、首相が自らを批判する聴衆に向けた「こんな人たちに負けるわけにはいかない」という言葉だ。

都議選の惨敗後、いったんは「批判にも耳を傾けながら、建設的な議論を行いたい」と釈明したのに、今年4月に再び、国会でこう語った。

「あの時の映像がいまYou Tubeで見られる。明らかに選挙活動の妨害行為だ」

財務事務次官によるセクハラ疑惑に対し、被害女性をおとしめるような麻生財務相、下村文部科学相の発言もあった。

憲法が定める普遍的な価値に敬意を払わないのは、安倍政権発足以来の体質といえる。

この5年余、首相は経済を前面に立てて選挙を戦い、勝利すると、後出しじゃんけんのよろに「安倍カラー」の政策を押し通す手法を繰り返してきた。

国民の「知る権利」を脅かす特定秘密保護法、歴代内閣が違憲としてきた集団的自衛権の行使に道を開く安全保障関連法、捜査当局による乱用が懸念される共謀罪の導入……。
合意形成のための丁寧な議論ではなく、与党の「数の力」で異論を押しのけてきた。

1強ゆえに、内部からの批判が声を潜め、独善的な政権運営にブレーキがかからなかったことが、現在の問題噴出につながっているのではないか。

ちょうど1年前のきょう、首相は9条に自衛隊を明記する構想を打ち上げ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と宣言した。
与野党の対立で国会内の機運はすっかりしぼんだが、首相はなお任期中の改憲に意欲をみせる。


    優先順位を見誤るな

「21世紀の日本の理想の姿を、私たち自身の手で描くという精神こそ、日本の未来を切りひらいていく」。
首相は1日、新憲法制定を目指す議員連盟主催の会合にそんなメッセージを寄せた。

透けて見えるのは、現憲法は占領期に米国に押し付けられたとの歴史観だ。
人権、自由、平等といった人類の普遍的価値や民主主義を深化させるのではなく、「とにかく変えたい」という個人的な願望に他ならない。

本紙が憲法記念日を前に実施した世論調査では、安倍政権下での改憲に「反対」は58%で、「賛成」の30%のほぼ倍となった。
政策の優先度で改憲を挙げたのは11%で、九つの選択肢のうち最低だった。
「この1年間で改憲の議論は活発化した」という首相の言葉とは裏腹に、民意は冷めたままだ。

いま首相が全力を尽くすべきは、一連の不祥事の全容を解明し、憲法に基づくこの国の統治の仕組みを立て直すことだ。
それなくして、今後の政権運営は立ち行かない。

首相の都合で進める改憲は、もう終わりにする時だ。


最近のこの国の政治状況がよく分かるように分析されていると思います。
今の歴史資料として、この「2018.5.3 社説」を記録しておきたいと考えました。

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