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「開化鐵道探偵」

2018年05月21日 | もう一冊読んでみた
開化鐵道探偵/山本巧次  2018.5.21  

    2018年版 このミステリーがすごい!
    国内篇 第10位 開化鐵道探偵


「著者 あとがき」には、次のように述べられています。

 日本の鉄道の黎明期の物語です。
 舞台は一八七九年、掘削中の逢坂山トンネルの現場です。
 鉄道局長の井上勝は、京都---大津間の鉄道建設に際し、日本人だけで鉄道を作りあげることを目指します。この区間にある逢坂山トンネルは、日本初の山岳鉄道トンネルであると共に、日本人だけで工事が成し遂げられた画期的なものでした。
 本作は史実を下敷きにしたフィクションです。


    日本の鉄道の父と呼ばれる井上勝

先日放送された下記の番組が再放送されます。

5月22日(火) Eテレ再放送

  先人たちの底力 知恵泉(ちえいず)▽鉄道の父・井上勝プロジェクト成功の知恵

逢坂山トンネル 明治13年完成
日本で掘削された最初の山岳隧道(トンネル)で、外国人技師に頼らず日本人だけで完成させた。
工事の総監督は飯田俊徳が、現場の工事監督は国沢能長が務めた。(Wikipedia)


新しい国造りに懸ける人々の物語です。
彼らの情熱と熱意にあふれています。
発展の影で消えていく産業が有り、没落せざるを得ない人々の悲劇もあります。

日本国の産業発展を陰で支えた人々も。

 「銀山でも、こういう掘り方をするんですか」
 「まあ、鶴嘴も使うけど、坑道の先端では鏨と鑿やな。固い岩盤をちょっとずつ掘って、その岩に入っとる銀を採っていくんや。ここはそれほど固うない土やから、、鶴嘴に向いとる」
 「銀山とはだいぶ勝手が違うんですか」
 「そやな。何ちゅうても、坑道の大きさが全然違うわ。ここは生野の一番大きな坑道の何倍もある。高さも幅も十四尺なんちゅう穴を掘ったんは、生まれて初めてや」
 「銀山の坑道は、ずっと狭いんですね?」
 「せや。狸掘り、ちゅうてな。坑道の先の方では、高さ二尺のない穴へ這いこんでいって鑿を打ち込むんや。広めのとこでも座り込んで頭が天井につくぐらいや。狭かったら、腹這いで掘ることもある」
 「腹這い、ですか」
 地中深くでそんな狭い穴に体を突っ込んで作業するなど、考えたくもない、と小野寺は思った。


いつの時代も..........

 「それにしても、せっかく御一新を成し遂げて、さあこれからこの日本を列強に好き放題されんような国にしていこうちゅうときに、薩摩だ長洲だと、儂らはやっとることが小さいのう。こういうのを島国根性、ちゅうかのう」
 「人間ちゅうのは、頭では理想を掲げても、どうしても目先のことに振り回されますから。その中を上手く泳ぎ回った奴が上に行く。結局、幕府が新政府に変わっても、その辺は変わらんのかも知れませんな。人間の性、ですかの」


以前、国鉄時代の北海道の鉄道路線図を見ました。
北海道の隅々まで鉄道網がびっしりと張り巡らされています。
現在のJR路線図を見ると地方の路線が消えています。
住民にとっては、どちらが幸せだったのでしょうか。
発展とは、何か、考えさせられます。

    北海道の昭和9年鉄道路線図

    JR 鉄道路線図

      『 開化鐵道探偵/山本巧次/東京創元社 』


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