■われら闇より天を見る 2022.11.14
クリス・ウィタカー 『 われら闇より天を見る 』 を読みました。
スター・ランドリーの父親、ダッチェス・デイ・ランドリーの祖父である、ハル・ランドリーの一生を思う時、とても切ない気持ちになる。
ダッチェスとロビンがハルと一緒に過ごしたのは、つかの間だった。ともに過ごした一日一日は、一瞬なりとも彼の孤独をいやしたことと願いたい。
「人は終わりから始めるんだ」の物語
厳しくて寂しい、そして、悲しい物語
ヴィンセントがウォークに気づいてにっこり微笑んだ。それは思い出せないほど多くのトラブルにウォークを巻きこみもすれば、救い出してもくれた笑みだった。ヴィンセントは健在だった。人は変るものだと世間がいくら言おうと、友は健在だった。
「刑務所ってのは光を消しちまうもんだ。だけどこの家は……もしかしたら小さな炎なんだ。小さいけれどまだ燃えてる炎なんだよ。そいつを、その最後の光を消しちまったら、あとは真っ暗になって、もうおれにはそれが見えなくなっちまう」
「あんたはね、あの子にいいことをみんな思い出させるの。あの子の大切な人なんだよ。嘘をついたりも、人をだましたりひどい目に遭わせたりもしない人。口には出さないけど、あの子はあんたを必要としてるの。だから絶対にあの子を失望させないで。それは明かりを吹消すようなものだからね」
「まだ若いんだってことは知ってる。わたしも歳を取るまではわからなかった」
「何が?」
「自分がこの世でひとりぼっちじゃないってことが」
過去は修復できないし、時計の針は戻せない。
ダッチェスは何が人間を形づくるのか知っていた。それは心に刻み込まれる記憶やできごとなのだ。
「だから教会に通ってるの?」
「人間のしてしまったこと、するかもしれないこと、それを理解するためだ」
「ひとつの大きな愛を持ってたら、それでいいんだと言ってた。それを見つけられたらラッキーなんだ。それに比べたらあとはすべて、無に等しいんだと」
「きみはただ……そのままでいいんだと」
『 われら闇より天を見る/クリス・ウィタカー/鈴木恵訳/早川書房 』
クリス・ウィタカー 『 われら闇より天を見る 』 を読みました。
スター・ランドリーの父親、ダッチェス・デイ・ランドリーの祖父である、ハル・ランドリーの一生を思う時、とても切ない気持ちになる。
ダッチェスとロビンがハルと一緒に過ごしたのは、つかの間だった。ともに過ごした一日一日は、一瞬なりとも彼の孤独をいやしたことと願いたい。
「人は終わりから始めるんだ」の物語
厳しくて寂しい、そして、悲しい物語
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/70/6d3ea6ecbadbdb93097166e37861f281.png)
ヴィンセントがウォークに気づいてにっこり微笑んだ。それは思い出せないほど多くのトラブルにウォークを巻きこみもすれば、救い出してもくれた笑みだった。ヴィンセントは健在だった。人は変るものだと世間がいくら言おうと、友は健在だった。
「刑務所ってのは光を消しちまうもんだ。だけどこの家は……もしかしたら小さな炎なんだ。小さいけれどまだ燃えてる炎なんだよ。そいつを、その最後の光を消しちまったら、あとは真っ暗になって、もうおれにはそれが見えなくなっちまう」
「あんたはね、あの子にいいことをみんな思い出させるの。あの子の大切な人なんだよ。嘘をついたりも、人をだましたりひどい目に遭わせたりもしない人。口には出さないけど、あの子はあんたを必要としてるの。だから絶対にあの子を失望させないで。それは明かりを吹消すようなものだからね」
「まだ若いんだってことは知ってる。わたしも歳を取るまではわからなかった」
「何が?」
「自分がこの世でひとりぼっちじゃないってことが」
過去は修復できないし、時計の針は戻せない。
ダッチェスは何が人間を形づくるのか知っていた。それは心に刻み込まれる記憶やできごとなのだ。
「だから教会に通ってるの?」
「人間のしてしまったこと、するかもしれないこと、それを理解するためだ」
「ひとつの大きな愛を持ってたら、それでいいんだと言ってた。それを見つけられたらラッキーなんだ。それに比べたらあとはすべて、無に等しいんだと」
「きみはただ……そのままでいいんだと」
『 われら闇より天を見る/クリス・ウィタカー/鈴木恵訳/早川書房 』
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます