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「後悔と真実の色」 平さんあんたひとりだよ、共感できたのは

2017年12月04日 | もう一冊読んでみた
後悔と真実の色/貫井徳郎  2017.12.4

 男は不意に口を噤んだ。男がすべてを過去形で語っていることに平さんは気づいていた。だからただ、つらかったんだな、と言ってやった。男は水面を見つめたまま、頷きもしなかった。
 つまらないことを喋りました。男はそう言って、立ち上がった。


貫井徳郎著 『後悔と真実の色』 を読みました。
登場人物は、たくさん出てくるのですが、共感できたのは平(へい)さんひとりだけです。
ぼくには、出てくる刑事の誰も彼もが嫌な奴ばかり。
ぼくが読んだミステリのなかでは、こんなことはめずらしい。
物語は、面白かったのですが。

現役で働いていれば、必ず、ライバル達はいます。
彼我の違いに悩み、時間と労力を随分と無駄にしただろうなと、今にして思う。
退職して過ぎ去った日々を振り返ってみると、そのことがよく分かります。
悶々とする暇があったら、気持ちを切り換え、これから先のことを考え(人生は続くのだから)、生きがいとなる何かを探し、それに時間と労力と気力をつぎ込んだ方が、ずっと建設的だったはず。 人生は、もっとゆたかなはずだ。

 人間はあらゆる面で自分より優れた者と出会ったとき、どのように感じるものなのだろうか。敗北感に打ちのめされるのか。純粋に格の違いを認めて白旗を揚げるのか。相手を己の理想とし、近づくための努力を重ねていくのか。綿引の心に生まれた感情は、そのいずれでもなかった。醜い嫉妬、ただそれだけでしかない。綿引は自分の感情に戸惑い、嫌悪し、他人を羨む己に腹を立てた。なんという卑しさかと、ひたすらに恥じ入った。それでも心に巣くった醜い感情は、綿引の中から消えなかった。綿引は自らを憎み、そしてそんな思いを植えつけた西條を恨んだ。それが西條にしてみればただの言いがかりに過ぎないとわかっていても、恨まずにはいられなかった。

読んでみて、疑問に思ったことがふたつほどあります。
ひとつは、西條が 「自己顕示欲」 という返答を意外に感じていることですが、ぼくは、そうは思わなかったのです。
真実は、別のところにあったのですが。

 「なあ、ホシはどうして指を切り取るんだと思う?」
 「自己顕示欲、じゃないですかね」
 「自己顕示欲」
 そんな推測は予想していなかった。異常者による猟奇的犯行といった、ごく当たり前の答えが返ってくると思っていたのだ。


もうひとつは、西條が警察に辞表を提出して、すぐホームレスになってしまったことです。
人間、職を失った途端、ホームレスになってしまうものでしょうか。疑問に思いました。
少し、極端すぎませんかねえ。

      『 後悔と真実の色/貫井徳郎/幻冬舎 』



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