BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

鈴を鳴らして 第一話

2024年01月03日 | F&B×刀剣乱舞クロスオーバーパラレル二次創作小説「鈴を鳴らして」
「刀剣乱舞」「FLESH&BLOOD」の二次小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。

「おめでとうございます、あなたは審神者に選ばれました!」
「え?」
東郷海斗は、突如変な狐に話し掛けられ、呆然としていた。
「あの~、あんた誰?」
「あ、初めまして、わたくしは、こんのすけと申します!」
「そ、そう。」
それからこんのすけは、海斗に審神者の事を説明した。
どうやら、海斗は生まれながらにして霊力が高いようで、それが審神者捜しに奔走していた機関の目に留まったという。
「それで、俺はどうすればいいの?」
「本丸へご案内致します。」
こんのすけに連れられ、海斗は純日本家屋へと向かった。
「ここが本丸です。」
ひと通りこんのすけから本丸を案内された後、海斗は大広間に入った。
そこには、見知らぬ美少年達と美男子達が集まっていた。
いつもグローリア号の乗組員―揃いも揃って美男子揃いの中で生活してきた海斗は、ある程度免疫があったのだが、自分の前に座っている美男子達は、自分の恋人とその親友よりも眩しい程の美貌の持ち主だった。
「こちらが、この本丸の近侍である加州清光です。」
「あんたが、俺達の新しい主?俺、加州清光、よろしくね!」
黒髪に紅の瞳をしている青年は、そう言うと海斗に微笑んだ。
「よろしく・・お願いします。」
「そんなに緊張しなくていいって!あ、これから主の歓迎会を開くから、遅れないでね!」
「わかった。」
清光主催の歓迎会で、海斗は他の刀剣男士達と初めて顔を合わせる事になった。
(うわぁ、右を見ても左を見てもイケメンばかり・・俺、頭痛くなりそう・・)
「主、どうしたの?」
「美形ばかりで、目が・・」
海斗はそう言うと、気を失った。
「主、大丈夫?」
「ごめんね、急に倒れたりして。」
「全然大丈夫!それにしても、主の髪って、地毛なの?」
「ううん、染めているよ。」
「そうなんだ、可愛い~!俺も染めたいなぁ!」
「清光は黒髪が一番似合うと思うよ。」
「え~、俺そう主に言われたら、このままにしようかな~!」
「清光、さっき君の隣に居た銀髪のイケメン、誰だっけ?」
「あ~、大般若長光だよ。何、あいつが気になるの?」
「うん。何だか、ブラッキーみたいだなぁって。あ、ブラッキーはグローリア号で飼っている猫なんだ。」
「へぇ、そうなんだ。確かにあいつ、猫っぽいかも。」
清光はそう言うと、海斗の右手親指の下に「T」の焼き印がある事に気づいた。
「主、それは?」
「あぁ、これは・・」
海斗は清光に、ジェフリーとの出会いから彼と結ばれるまでの経緯を話した。
「へぇ~、凄いね。それで、主の恋人って、美男子なの?」
「うん。」
「一度会ってみたいなぁ~!」
清光がそう言った時、部屋の襖が勢い良く開いた。
「ねぇ、今の話聞いたけれど、主は人妻なの?」
「え?」
突然部屋に入って来た包丁藤四郎からそう言われ、海斗は思わず顔を赤らめた。
「わ~い、人妻だぁ!」
「ぎゃ~!」
包丁藤四郎に突然抱きつかれ、海斗は悲鳴を上げた。
「こら、包丁、主から離れなさい!」
「ヤダ~!」
「申し訳ありません、主殿。弟は人妻とお菓子が好きでして・・」
そう言った青年―一期一振は、慌てて包丁藤四郎を海斗から引き離した。
「今日は色々と疲れたでしょうから、ゆっくり休んで下さい。」
「わかったよ、お休み。」
「清光もお休み~」
清光に手を振り、海斗は本丸に与えられた部屋で朝まで夢も見ずに眠った。
「主様、おはようございます。」
「おはよう、こんのすけ。」
「おはよう、主。今朝は主が好きなローストビーフサンドを作ってみたよ。」
「ありがとう、光忠。」
眼帯をしている燭台切光忠の姿に、海斗はナイジェル=グラハムの姿を重ね合わせていた。
「どうしたの?」
「う~ん、何だかあなたを見ていると、ナイジェルを思い出しちゃって・・」
「あぁ、主に片思いをしている航海長の事だね?一度でいいから、会ってみたい。」
「グローリア号の皆、元気にしているかなぁ?」
「元気にしていると思うよ。あ、これグローリア号の皆に。」
光忠がそう言って海斗に手渡したのは、菊や牡丹の模様が施された輪島塗の重箱だった。
「ありがとう、光忠!」
「口に合うといいんだけど。」
光忠から渡された重箱を風呂敷に包み、海斗は食堂から出て自室へと戻った。
「主、午後から審神者会議がありますので、今の内にお召し替えをなさいませんと。」
「俺、これらグローリア号に行くんだけれど・・振袖だと厳しいかな。」
「ならば、袴に致しましょう!」
へし切長谷部に半ば押し切られるような形で、海斗は袴姿でグローリア号へと向かった。
「カイト、その格好はどうした?」
「ちょっと、色々あってね。あ、それよりも、光忠からお弁当の差し入れだよ!」
「ありがてぇ!」
ルーファス達は、海斗の言葉を聞くと仕事の手を休めて彼の元へと向かった。
「これは、何だ?」
「日本では、この箱の中に食べ物を入れるんだよ。」
「美味そうだ!」
海斗が重箱の蓋を開けると、そこには光忠が作ってくれた卵焼きや鶏の唐揚げ、ポテトサラダなどが入っていた。
「カイト、“サニワ”の仕事は忙しいのか?」
「まだわからない。」
「そうか。余り無理をしないようにしろよ。」
「わかった。」
その時、海斗は背後から鋭い視線を感じて振り向くと、そこには誰も居なかった。
「どうした、カイト?」
「ううん、何でもない。」
(気の所為かな。)
「それじゃぁジェフリー、行って来るね。」
「あぁ、気をつけてな。」
グローリア号から去っていく海斗を、少し離れた所から一人の少年が見ていた。
「やっと見つけた・・海斗。」
「あなたが、東郷海斗さん?」
突然背後から声を掛けられた海斗が振り向くと、そこには黒髪をポニーテールにした審神者の姿があった。
「はじめまして、わたくしは絵里香。あなたの事は、色々とお噂を聞いているわよ。」
「へ、へぇ・・」
絵里香の何処か人を見下したかのような態度を見ると、その噂が余り好ましくないものだという事を、海斗は薄々と気づいていた。
「ご機嫌よう。」
「主、気にする事ないよ。」
「ありがとう、清光。」
「審神者の皆さんは、第一会議室へ移動して下さい。」
政府関係者の声を聞いた海斗は、慌てて清光と共に第一会議室へと向かった。
そこには、先程海斗に嫌な態度を取って来た絵里香の姿もあった。
「では皆さん、揃いましたね。」
審神者の定例会議が終わった後、海斗は清光と共に本丸へと戻ろうとした時、不意に誰かが彼女の肩を叩いた。
「海斗、漸く会えたね。」
「和哉・・」
そこには、かつて自分と袂を分かった親友の姿があった。
彼は黒のスーツ姿で、表情も何処か暗かった。
「ねぇ、この後時間ある?」
「ええっと・・」
「主、俺先に行っているね。」
清光はそう言うと、海斗に目配せをして先に本丸へと戻っていった。
「いらっしゃいませ~」
和哉が海斗を連れて行ったのは、大正浪漫をコンセプトにしたカフェだった。
「今まで、何をしていたの?」
「それは、秘密。」
和哉はそう言った後、珈琲を一口飲んだ。
「海斗、髪を伸ばしたの?」
「う、うん・・おかしいかな?」
「ううん、会わない内に綺麗になったなって思って。」
「ありがとう。」
海斗がそう言いながら恥ずかしそうに髪を弄ると、和哉がスーツのポケットから何かを取り出した。
それは、蝶の形をした髪留めだった。
「これは?」
「君の為に作ったんだ。」
「ありがとう、大切にする。」
和哉は海斗の髪に髪留めをつけた。
「良く似合うよ。」
和哉とカフェの前で別れた海斗は、そのまま本丸へと戻った。
「ただいま。」
「お帰りなさい、主。お昼、出来ているよ。」
「ありがとう、光忠。」
今日の昼食は、カキフライ定食だった。
「頂きます!」
「主、その髪留め、綺麗!」
「ありがとう。これ、和哉から貰ったんだ。」
「和哉って、昔絶縁していた友達?」
「うん。会えて嬉しかった。」
「そう。」
清光はそう言うと、海斗の赤毛を飾っている髪留めが一瞬光ったような気がした。
(あれ?)
「主、お帰りなさい。」
「石切丸、遠征お疲れ様。」
「主、その髪留めは?」
「これは、親友から・・」
「失礼するよ。」
石切丸はそう言うと、髪留めを海斗の髪から外した。
彼は急に顔を曇らせた後、海斗に髪留めを預からせて欲しいと頼んで来た。
「いいけど、何かあるの?」
「あぁ、少しね。」
石切丸は海斗から預かった髪留めを持って、自室へと入った。
彼が祭文を唱えていると、髪留めの中から黒い“何か”が出て来た。
(やはりな・・)
その髪留めは大きく震えた後、真っ二つに割れた。
「ありゃ、何だい、それ?」
「驚かせないでくれ。」
「鬼の気配をこれから微かに感じるね。」
髭切は割れた髪留めを見ると、そう言って金色の瞳を眇めた。
「何だか、嫌な予感がする。」
石切丸がそう言って外を見ると、黒雲が空を覆い始めていた。
「あ~あ、降って来たね。」
「洗濯物、さっさと取り込んで良かったよ。」
「まぁ、梅雨だから仕方ないよね。」
海斗が光忠達と洗濯物を畳んでいる頃、和哉は寂れた街の路地裏で腹を押さえて倒れていた。
漆黒のスーツに血を滲ませ、彼は徐に起き上がると、雨に打たれながら、人気のない通りを歩き始めた。
(まだだ・・まだ、ここで死ぬ訳にはいかない。)
漸く、海斗に会えたのだ。
まだ、自分にはする事がある。
だから―
(海斗・・)
脳裏に浮かんだ海斗の笑顔を焼きつけながら、和哉は意識を失った。
「和哉、俺はもう帰らない。だから・・」
(嫌だ、海斗!)
「起きたかい?」
「ん・・」
和哉が目を開けると、そこは見慣れない部屋の天井だった。
「まだ腹の傷が塞がっていないから、無理はしない方がいい。」
そう言って彼に微笑んだのは、漆黒のドレスを纏った女だった。
「あなたは・・」
「ゆっくりと、お休み。」
女は、和哉の額に口づけると、そのまま部屋から出て行った。
「え、パーティー?」
「はい。審神者同士の親睦を深める為、月に二回行われます。」
「そうなんだ。行きたいけれど、ドレスが・・」
「ドレスなら、俺に任せて!」
「ヘアメイクならわたし達にお任せください。」
「主、わたしが・・」
審神者同士の親睦を深めるパーティーには、華やかな振袖やドレスで着飾った女性達が集まっていった。
その中で一際目立っていたのは、美しい蒼のドレス姿の絵里香だった。
「まぁ絵里香様、そのドレス、お似合いですわ。」
「ありがとう。」
絵里香は、海斗がどんな格好をしてパーティーに来るのかを友人達と賭けをしていた。
「あの子、どんなドレスを着て来るのかしら?」
「さぁね。」
「楽しみだわ。」
絵里香がそんな事を友人達と話していると、そこへ一組の男女が入って来た。
女―海斗は、鮮やかな真紅のプリンセス・ラインのドレスを着ていた。
背中まである長さの髪をシニョンに纏め、胸元には涙型の真珠のネックレスが輝いていた。
そしてその彼女をエスコートしているのは、金髪碧眼の美男子だった。
「何あの人・・」
「あの真珠、天然真珠だわ!」
「しかもあのドレス・・」
海斗は周囲から視線を感じ、俯きそうになった。
しかし、ジェフリーの言葉が、彼女を勇気づけた。
「堂々としていろ、カイト。」
「うん・・」
「それにしても、人が多いな。」
「まぁ、月に二度行われているパーティーは、男女の出会いの場でもあるからね。夫婦の審神者も出席しているよ。」
「そうか。安心しろ、カイト。俺はお前一筋だからな。」
「もうっ・・」
海斗がそう言ってジェフリーを睨んだ時、会場に一組の男女が入って来た。
(和哉?)
漆黒のドレスを着た美女をエスコートしている少年は、和哉だった。
「あの方は・・」
「そんな・・」
先程まで自分に向けられていた周囲の視線が、和哉達の方へと向けられている事に気づいた。
「あら、あなたは確か井上会長のお嬢さん?」
「まぁ、わたくしの事をご存知なの?」
「ええ。実力が無い癖に、家柄を笠に着て威張り散らしているのでしょう。」
美女の言葉を聞いた周囲の者達は、クスクスと笑った。
「何ですって!お父様に言いつけてやる!」
「そうやっていつまでも親に甘えられるのも、今の内よ。さようなら、世間知らずのお嬢さん。」
美女は笑顔を浮かべながらそう絵里香に毒を吐くと、パーティー会場から出て行った。
絵里香は怒りで顔を赤く染めると、そのままパーティー会場から出て行った。
「海斗、また会ったね。」
「和哉・・」
和哉は華やかに着飾った海斗の隣に立っているジェフリーを睨んだ。
「どうした?言いたい事があるなら、言ったらどうだ?」
「この後、何処かで話しませんか?」
「わかった。」
「海斗、またね。」
「うん・・」

何処か変わってしまった親友の姿に、海斗は少し戸惑っていた。

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