エルマーとりゅう
どうぶつ島を脱出した竜とエルマーは、みかん島からかれき町へ向かった。 嵐に遭遇して浅瀬の砂地に不時着する事になったが、幸いなことに近くにカナリヤばかりが住むカナリヤ島があった。 エルマーは、昔、家で飼っていたカナリヤのフルートと再会し、カナリヤの王、カン十一世を紹介された。 先祖のカン一世は人間に連れて来られたが、その人間達は、将来、島に戻ってきた時のためにと、木を植えたり畑を作ったり、宝箱を埋めたりして去った。宝箱については、王様だけが代々語り継いでいた。代々の王様は中身が気になり、知りたがり病に侵されていた。 王様が何を知りたがっているのか気になって、島中のカナリヤが知りたがり病になっていた。 カン十一世は決着をつけようと、エルマー達に宝箱の秘密を教え、掘り出してもらうことにした。 カン十一世から渡された鍵で開けると中から食器セットや金の時計、純銀のハーモニカ、金貨6袋等が出てきた。 カナリヤには使いようの無いものだらけだったが、カン十一世は金貨を見て溜め込めば金持ちになれると喜んだ。 エルマーと竜は金貨やハーモニカ、金の時計をお土産に受け取り、かれき町へと向かった。 竜が人間達に見つかって騒ぎにならないように注意しながら、エルマーは家の近くに下ろしてもらう。家に帰った日はエルマーの父の誕生日であり、エルマーは帰宅を喜ぶ両親を前にプレゼントとしてカナリア島で貰ったお土産を父に渡し、ハーモニカを吹くのだった。
エルマーと16ぴきのりゅう
エルマーと別れた竜は、家族のいるそらいろ高原に向かった。 人間に見つからないように夜に移動し、昼間は橋の下に隠れようとしたが、体を隠せる橋が中々見つからず、大きな土管を見つけて眠った。 途中で走っている所を百姓のワゴンに見られてしまい、追われることとなったが、ワゴンの牛達が助けてくれた。 とんがり山脈を越えてごびごび砂漠に入ると、いつも人間達を阻んでいた砂嵐が無く、そらいろ高原が丸裸になっていた。 竜は、そらいろ高原の岩山の上に人間達を見つけて近寄り、その会話を盗み聞きした。 そこで竜は、人間達が15匹の竜の寝込みを襲って洞穴に追い込んだ事を知った。 入り口では人間達が大きな網を張って竜達が飛び出してくるのを待ち構えていた。 入り口と反対側の小さな穴から潜り込んだ竜は、途中でつかえて進めなくなるが、両親と姉妹6匹、兄弟7匹全てに、助けを呼んでくるまでじっと待つように伝えた。家族は竜の事をボリスと呼んだ。 エルマーに助けを求めに引き返したボリスは、また人間達に見つかりながらも、エルマーの家の近くのみどり公園まで飛んで行った所、猫に発見され、エルマーに報せが届いた。 ボリスと猫とエルマーで作戦会議をした後、エルマーは道具を買い集め、ボリスに乗ってそらいろ高原を目指した。 洞穴の小さな穴に着くと、エルマーはボリスと家族の間を往復して準備を進めた。 ボリスが聞いた人間達の会話に出てきた名前を叫びながら、エルマーは運動会用のピストルを撃ち、洞穴の内側から人間達に助けを求めた。 洞穴の外の人間達は、仲間が竜に捕まったと勘違いし、助けに応じて網を抑えていた大石を動かし、網をどけ始めた。 3発目の銃声を合図に、ボリスは笛とラッパを鳴らして外を走り回り、さらに15匹の竜も呼応して笛とラッパを吹きはじめ、こだまする大音響で人間達を驚かし、開いた網の隙間から逃げることに成功した。 ボリスがエルマーを連れ帰る途中、砂漠に砂嵐が戻って来そうな気配がした。砂嵐があればもはや人間達はそらいろ高原には留まれない。 ボリスはわかめ町記念塔の上にエルマーを下ろし、共に別れを惜しんだ。 エルマーは安全のために竜について猫以外には誰にも話さない事を約束した。 エルマーが汽車でかれき町まで帰った翌日、新聞に竜の目撃談が沢山掲載された。 竜に子供が乗っていたという話もあったため、父親はエルマーが関係してないか聞いたが、エルマーは「そんなバカな話、本気にしてるの?」と笑うばかりであった。