自衛隊・小銃乱射2名死亡》「キレやすい問題児だった…」執拗に発砲を続けた18歳容疑者“狂気”の瞬間 現役自衛官は「弾をそんなところで配っちゃマズい」
6/17(土) 17:42配信
347コメント347件
殺人容疑で逮捕された18歳の自衛官候補生の男性
《18歳容疑者“卒アル写真”入手》“陸自演習場・自動小銃発砲2名死亡”逮捕の男の人生が狂い始めた瞬間「中学に入るとすぐに来なくなり…」「友達は少なくて、モテるタイプでもなかった」 から続く
【卒アル写真】むすっとした表情で集合写真に収まる容疑者
6月14日朝に岐阜市内にある陸上自衛隊「日野基本射撃場」で発生した18歳の自衛官候補生の男による発砲事件。菊松安親1曹(52)が胸に2発、八代航佑3曹(25)が脇腹に1発被弾して死亡し、原悠介3曹が太ももを撃たれ重傷を負った。未だ動機など不透明な部分があるが、発生から3日が経過し、悲惨な事件の詳細が徐々に明らかになってきた。防衛省関係者が明かす。
「容疑者は、事件発生当時、次に射撃するグループの一員として待機場所にいました。射座についてからやるはずの弾倉の装填を始め『動くな』と叫びました。いち早く制止しようとした八代3曹が最初に撃たれました。そして、男は的とは真逆の後方に進み、菊松1曹に向かって発砲。さらにこれを制止しようとした原3曹にも発砲し、再び菊松1曹に発砲しました。教育隊長らが男を取り押さえましたが、なおも男は数発発砲したようです。弾倉を取り外されても、それを拾って再び撃とうとするなど狂気じみた犯行でした」
現役自衛官は「そんなところで(弾を)配っちゃまずいだろう」
射撃訓練の教官を務めた経験もある現役自衛官は、事件についてこう話す。 「小銃の取り扱いは非常に厳格で、ひとつひとつの行動は細かいルールに基づき、上官の指示の下で行われます。私が教官をしていた際は、訓練生は順番が来ると射撃線のある場所まで進み、銃を足元に置いてから実弾が置いてあるところへ取りに行っていました。弾倉に装填するのは射撃線に戻ってからです。まどろっこしい手順ですが、安全管理のために詳細に決まっていたんです。この間、薬莢回収係や射撃係が注視しているので、今回のような犯行を行うことは非常に難しい状況でした」
では、なぜ今回のような悲惨な事件が起きてしまったのか。
「テレビで映像を見て驚愕したのですが、どうやら射撃線から10メートルほど後方の待機線で実弾を渡されていたようです。
『そんなところで配っちゃまずいだろう』というのが正直な感想です。教官の立場としては、実弾が装填された小銃を持った隊員が自分の後ろにいるのは想像するだけでも怖いはず。明らかに射撃訓練のオペレーションに問題があったのではないかと思います」
事件発生当時、「AEDを探せ」「コンビニにある」と叫ぶ隊員らの怒声やコンビニに駆け込む隊員を近隣住民が目撃していた。この現役自衛官はこの点も疑問視する。
「通常、射撃訓練をする時にはAEDを携帯しますが、今回は持ってきていなかった。射撃訓練と別の場所で対戦車ミサイルの訓練のようなより危険な訓練が行われていて、そちらに優先してAEDを配置した可能性はありますが……。
もし事件現場にAEDがあれば死亡した隊員が助かっていたかもしれないと思うと、残念でなりません。防衛省としても、今回の悲惨な教訓をしっかりと活かさないといけないと思います」
容疑者の男を知る人によれば、男は「中学時代からキレやすい問題児だった。特別支援学級にいたはず」という証言もある。
森下泰臣陸上幕僚長は会見で、記者から「容疑者の適性に問題はなかったのか」と質問され、「採用時において特に問題があったとは承知していない」と答えている。本当に容疑者の男を採用し、自動小銃を触らせることに問題はなかったのだろうか。
安全保障アナリストで自衛隊にも詳しい慶應義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮氏はこう指摘する。
「自衛官候補生の質の悪化は近年ずっと問題視されています。最近は募集枠の半分程度しか集まらず、なりふり構わない採用になっている。前科があるとさすがに無理ですが、万引きの前歴程度や名前がちゃんと書けなくても採用されることも。容疑者についてリスクがわかっていたのならば、銃を触らない事務官に配置転換することもできますよね。自衛隊は銃や戦車を扱う組織ですから、適性のない人間が配置されれば今回のような惨事が起きてしまう。しかし人事のミスマッチが自衛隊では頻発しているんです。
容疑者の男は、第一線の精鋭部隊を希望していたとも聞いています。それが評価につながっていた可能性もあります。募集が少ない中で厳しい部署を希望する人がいれば目立ちますからね」
部谷氏は背景にあるのは自衛隊の人事制度が「時代の流れに沿っていない」ことだと指摘する。
「自衛隊の任務は増え続けていて、定員割れした部隊の現場の人手不足が顕著になっています。例えば2018年に全国5カ所の各方面総監部の上位に、陸上総隊司令部が新設されました。
当初は方面総監部を廃止することが想定されていたのですが、将軍ポストを残すために結局廃止されなかった。新しい組織を作ると新しい人が必要となります。無人化も遅れていて、人手にこだわる前近代的な風潮が残っています。セクハラ・パワハラ問題が話題になるのも、人事政策が近代化されていない証左ですね。
待遇が悪いことも若者離れを加速させている。
米軍は兵士それぞれに個室がありますが、自衛隊は基本的に相部屋
こういったことも隊員の質の低下に繋がってしまっています。国防を担う組織だからこそ、人事的な制度から見直すべき時期にきていると考えています」
そしてこう締めくくった。 「今回事件が起きてしまった事件を起こした教育隊には素晴らしい教官が複数いると、他の部隊では有名だった。その組織でも事件が起きてしまったことを重く受け止め、個人や一部隊の管理の問題ではなく、自衛隊という組織全体が抱える採用や人事問題として取り組むべきです」
▼▼▼ 「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:sbdigital@bunshun.co.jp 文春くん公式ツイッター: https://twitter.com/bunshunho2386