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あなたは100歳まで生きられる?

2024年09月26日 11時05分46秒 | 医学と生物学の研究のこと

あなたは100歳まで生きられる? 科学者の見解は 


人間の寿命には限りがあり、私たちはもうその限界に達しているかもしれない。


100歳まで生きられると思ってはいけない。イリノイ大学シカゴ校で人間の寿命を研究するS・ジェイ・オルシャンスキー氏はそう考えている。ほとんどの人の寿命は65歳から90歳の間だというのが同氏の意見だ。


オルシャンスキー氏によると、寿命が今以上に延びないのは体の仕組みのせいだ。人間は成長や生殖に都合がいいように進化してきたが、極端な長生きに向けて進化してきたわけではない。人は年を取ると、細胞や組織にダメージが蓄積される。細胞や組織に何らかの故障が頻繁に起きるようになり、修復はどんどん難しくなる。科学者は多くの遺伝子が寿命に関係していると考えている。加齢は複雑なプロセスで十分に解明されていない。


自分の見解の受けがよくないことはオルシャンスキー氏も承知している。


長寿ビジネスは活気づいている。人々は長寿がテーマの会議に押し寄せ、寿命が延びることを期待して化合物を摂取する。投資家は、細胞をプログラムし直して若返らせる技術を研究する科学者を支援している。研究の目的は、年齢と共に衰える機能の回復だ。長寿について発信するインフルエンサーは、十分に長生きすれば科学分野で飛躍的な進歩が起き、いつまでも生きられるようになると主張している。


「自分自身を若返らせたり活性化させたりする方法の解明が始まろうとしている。それこそが科学の役割だ」。投資家が長寿分野の科学者と会うための旅行を主催する63歳の起業家、ピーター・H・ディアマンディス氏はそう話した。





あなたは100歳まで生きられる? 科学者の見解は
© The Wall Street Journal 提供

しかし現在70歳のオルシャンスキー氏は自身の予測にかつてないほど自信がある。同氏らが米国と寿命が最も長い先進国について、1990年から2019年までの人口統計データと死亡データを研究したところ、30年の間に、ある年齢の人が平均であと何年生きられるかを示す「平均余命」の延びが鈍化していることが分かった。平均余命は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で短くなる前から、伸びが止まっていた。


世代的な変化は
確かに100歳以上の人口は増えている。オルシャンスキー氏によると、100歳以上の人口が最も劇的に増加するのは、第2次世界大戦後のベビーブームから100年目を迎える2046年からだという。しかしこのグループの人口が増えても平均余命は変わらないだろう。同氏の予測では、どれほど環境が良くても、新生児のうち100歳の誕生日を迎えられるのは10%未満にとどまる。



アルバート・アインシュタイン医科大学で遺伝学部長を務めるヤン・ファイフ氏は別の角度から同様の結論に達した。同氏はさまざまな国で検証済みの最高死亡年齢を研究している。最高死亡年齢は少なくとも1950年代からは徐々に延びていたが、1990年代に入ると横ばいに推移しているようだった。



1997年に122歳で死去したフランス人女性ジャンヌ・カルマンさんは、今も最高齢まで生きた世界記録の保持者だが、ファイフ氏に驚きはない。きれいな水や抗生物質、死因の上位を占める心臓病やがんなどの病気の治療法向上、より健康なライフスタイルの恩恵を受けて、さらに数億人が最適な環境下で老年期に達している。




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© The Wall Street Journal 提供

もし寿命に限界がなければ、こうした100歳以上の人の何人かは今頃、カルマンさんの記録を更新していただろうとファイフ氏は主張している。


「ここが寿命の限界のようだ」とファイフ氏は話した。


ノーベル化学賞受賞者のベンキ・ラマクリシュナン氏は5月、ハーバード大学で満員の聴衆を前に、「人が死ぬ理由(Why We Die)」を説明した。これは同氏の新著の題名でもある。同氏は現在の介入によって寿命が著しく延びるとは考えていない。若がえりの技術は、脳を含む体のあらゆるシステムを長期間支援しなければならない。


「老化の原因を技術の力でなくすのは人が思う以上に複雑だ」とラマクリシュナン氏は話した。




2000年代生まれのほとんどの新生児は、医療の進歩が続けば100歳まで生きると予測した論文の共著者であるコーア・クリステンセン氏は、どの科学者の意見が正しいかを判断するには時期尚早だと話した。今後、医療が進めば、止まっている平均余命の延びを取り戻す可能性はある。


「停滞は一時的な可能性がある」とクリステンセン氏は話した。


クリステンセン氏によると、今90代の人は10年前早く生まれた人が90代だった頃と比べて、生涯にわたって認知機能がより健全で歯が健康だ。


「私なら、(100歳の代わりに)90歳に備えろと言う」。デンマークの高齢研究センターで超高齢者を研究するクリステンセン氏は話した。


老齢を巡る議論
オルシャンスキー氏が寿命の限界の研究を始めた1990年のことだ。この年、科学誌「サイエンス」に、がんや心臓病のなどの病気がなくなったとしても、平均余命が劇的に延びることはないとする論文を発表し、それからずっと寿命の限界を巡って異なる意見を持つ研究者と戦っている。




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© The Wall Street Journal 提供
人口学者のジェームズ・ボーペル氏はオルシャンスキー氏の見解に異論を唱えた。2021年の論文では、一部の国では0歳時の平均余命が1840年ごろから10年ごとに約2.5年延びていることを表す統計を示した。


ボーペル、オルシャンスキー両氏はボーペル氏が2022年に76歳で亡くなるまで、数十年にわたって対立する内容の論文を発表した。


150歳まで生きる最初の人はいつ生まれると思うか。アラバマ大学バーミンガム校生物学教授のスティーブン・オースタッド氏は2001年の科学会議でそう聞かれ、「もう生きていると思う」と答えた。答えは科学者が老化の仕組みを変える方法を発見するだろうという希望的観測に基づくものだったという。


オースタッド氏はオルシャンスキー氏と同じく、今生まれたほとんどの新生児は100歳までは生きられないと考えているという。しかし誰かが150歳まで生きられるという自身の希望的観測は正当だと考えている。同氏が指摘したある研究は、ラパマイシンという化合物をネズミに投与したところ、寿命が延びたことを示していた。かなり年を取ってから投与が始まったにもかかわらずだ。長生きすることに熱心な人々の中には、既にラパマイシンを摂取している人もいる。老化を防止する可能性のあるその他の化合物の研究も進んでいる。


オルシャンスキー氏はどのような介入を行っても、150歳までは寿命は延びないと考えている。「今の体ではそこまで生きられない」と同氏は話した。


富裕層や高学歴層は長生きする傾向にあり、オルシャンスキー氏を批判する人々の多くもこのグループに含まれる。「100歳まで生きられる可能性は、他の誰よりも高い」と、オルシャンスキー氏は自身を批判する人々について語る。「それでも全体的に見れば、その確率はまだごく低い」







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