
怪しいビジネス? 売却も国庫帰属もできない不動産を処分できる「有料引取サービス」の実態(MONEY PLUS) - Yahoo!ニュース
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怪しいビジネス? 売却も国庫帰属もできない不動産を処分できる「有料引取サービス」の実態
3/6(木) 7:31配信
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MONEY PLUS
イメージ画像(PIXTA)
日本各地で、使われなくなった不動産が増加しています。これらの不動産は、所有者にとって負担となり、手放したくても売却が難しいケースが多々あります。そんな中、資産価値が低く、なかなか買い手がつかずに困っている不動産を有料で引き取る「不動産有料引取サービス」が注目を集めています。
【画像】不動産引取サービスとは
一方で、一般的な不動産仲介サービス等と異なり、法規制が及ばない部分があることや、怪しい事業者も散見されるということで、国も注視すべきサービスの一つとして公表しています。
本記事では、要らない不動産が生まれた背景から、不動産有料引取サービスの実態や利用時の注意点までを詳しく解説します。
要らない不動産が生まれた背景
少子高齢化と人口減少により、地方の空き家や山林、農地といった未利用地が増加し、需要と供給のバランスが崩れています。そして、これらの不動産の多くは相続をきっかけに所有しているケースが多く、所有者にとっては必要のない不動産として、望まない所有になっていることが少なくありません。特に、遠方に住む相続人にとっては、利活用や管理が難しいことも相まって、何もせず放置される傾向にあります。
一方、未利用だからといって、草刈りなどの維持管理や固定資産税が不要になるわけではなく、さまざまな支出を伴います。そのため、”資産”であるはずの不動産が”負債”と化し、「負動産」と呼ばれることもあるほどです。
また、バブル崩壊以降、地方不動産の価格の下落や需要の変化により、売却が難しい物件が増えている側面もあります。特に、交通の便が悪い地域や過疎地の不動産は、買い手がつかず、所有者が手放せない状況が続いています。
要らない不動産を処分する方法は
要らない不動産を処分するための最も一般的な方法は、地元の不動産会社などに依頼して、不動産を売却することです。しかし、前述の通り、需要の低い地域や条件の悪い物件は、買い手が見つからないことが多いため、必ずしも容易に売却処分できるとは限りません。そのため、依頼を受ける不動産会社側にとっても、市街地の不動産に比べ売却までに時間や手間を要すこと、それに対して期待できる手数料収入などが見合わないことから、相談にすら乗ってもらえないケースも散見されます。
そんな中、2023年に「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。この制度は、所有者不明となっている土地を抑制する目的で創設され、相続によって取得した土地のうち、一定の条件を満たす土地は国に有料で引き取ってもらうことが可能になりました。かかる費用は20万円~と決して安くはないものの、所有経費がかさんでいき、いずれは自分の子や孫などに押し付けてしまうことを避ける手段として期待されています。
しかし、申請書類が多く煩雑で、審査期間も半年~1年程度と時間を要すうえ、建物のある土地(空き家)や境界が定かでない土地は引き取りの対象外とされているなど、審査の結果引き取ってもらえないケースも多く、誰もが気軽に利用できる制度とはいえない側面もあります。
そこで、近年注目されているのが、不動産有料引取サービスです。これは、所有者がサービス事業者に対して一定の費用を支払うことで、不動産を引き取るサービスを提供しており、その仕組みは国の制度と同様です。
不動産有料引取業者の特徴と魅力
不動産有料引取サービスの特徴は、処分するまでの手続きが簡単であるという点です。国の制度と比べても、引取条件が緩く、一部の農地を除いて、どんな不動産でも引き取ってもらえます。また、ほとんどの場合は最低限の資料を提供すれば、サービス事業者が自ら物件調査などを行い、契約に向けサポートしてもらうことができます。例えば、境界や場所すらも不明な山林や、傷みが著しく進行している空き家などでも引き取ってもらうこともできるため、遠方在住や高齢といった事情で処分にあたっての準備や整備に十分な時間を割けない所有者にとっても、気軽に利用できる点が魅力です。
不動産有料引取業者は怪しいビジネス?
不動産引取サービスの注意点
不動産引取サービスは、要らない不動産の処分に困った所有者にとって、非常に魅力的なサービスですが、一方で注意すべき点もあります。
以前より国民生活センターにおいて警鐘を鳴らしているほか、国土交通省においても、2025年2月14日に開催された不動産部会において、不動産引取サービスは多くの所有者にとって魅力的なサービスであり大きな期待を寄せている一方、注意点についても部会報告とともに公表されました。
注意点をまとめると、以下の3点が挙げられます。
①取引の安全性
サービス事業者の中には、不動産取引の経験や知識の少ない個人の弱みにつけこんで、しつこく契約を迫る営業手法を取ったり、契約前に名目不明な前金や契約後に説明のなかった追加費用を請求したりと、取引の安全性が脅かされるケースがあります。
そのため、不動産引取サービスを利用するうえでは、
・契約締結前までに、業者から費用や引取条件等の明確な提示と説明があること
・原則として、契約不適合責任が免責であること
・引取料金の支払が、所有権移転登記申請時以降であること(前金の支払がないこと)
といった点を慎重に確認することが重要といえるでしょう。
②不動産の適正価格での取引機会を確保すること
前述のように、サービス事業者の中には、契約を取るために、本来は資産価値がある不動産に対しても資産価値がないことを強調して、不動産所有者にとって有益な取引機会を奪ってしまう場面が生じるリスクがあります。
そのため、豊富な不動産知識に基づいて、消費者目線で客観的なサポートが期待できるかを見極めることが重要といえます。
③引取後の不動産の適正な管理を確保すること
不動産引取サービスで処分できた所有者にとっては、所有者名義がサービス事業者に移転した以上、その不動産の管理責任からも解放され、その後にトラブル等に巻き込まれる可能性は低いことになります。
しかし、その不動産の近隣所有者にとっては、サービス事業者が適正な管理をしないことで、例えば草木が伸び放題になったことで害虫や日照障害、倒木などの影響を被る可能性があります。実際に、サービス事業者の中には引き取った後に何もせず、近隣苦情等にも対応しない事業者もあるという噂もあり、最悪の場合は処分したはずの所有者に対して「新所有者が管理をしてくれないから、なんとか言ってくれ」といった苦情を受け、間に挟まれてしまうリスクも否めません。
その意味で、一つの目安として
- 引取後の管理や売却等の方針について、ホームページ等で提示すること
- 引取後の不動産の管理について、近隣からの苦情等があれば適切に対応し、放置しないこと
- 営業実態のある事務所住所、連絡先を、ホームページや郵送物等を用いて公表していること
といった点を確認することが重要といえるでしょう。
ちなみに、サービス事業者が引き取った後に、その不動産をどうしているかは各社方針がまちまちですが、自社でキャンプ場や宿泊施設に整備をして利活用をしているケースやソロキャンプ用地、DIY、家庭菜園といった利用目的の一般個人に転売しているケースなど、所有中の維持管理は当然として、遊休状態からの脱却を積極的に図っている事業者も多数あります。
これらの不動産引取サービスについては、宅建業法等では規制対象外であるという法律面の現状もあり、現在は引取サービス事業者同士で自主規制を図り、安全な取引環境を目指す取り組みも進んでいます。
信頼できる事業者を探すことが重要
使い道のない不動産を持ち続けることは、精神的にも経済的にも大きな負担となります。手放す手段として、不動産引取サービスの活用は有効ですが、事業者選びには十分な注意が必要です。
以下はリンクで、