
コロナ禍の影響で「パパ活」が増加したとも言われている。アルバイト先の休業などで経済的に困窮した女性が、男性と食事やデートをすることで金銭などの見返りを得る。いま、テレビや週刊誌などのメディアで取り沙汰されているが、その裏で、本当の親子がパパ活と間違われ、好奇の目を向けられてしまうケースも出てきている。
高級焼肉店で食事中、周囲から「パパ活かな?」とヒソヒソ声が…
現在22歳の餃子さん(Twitter:@gyouzachan_com)もその一人だった。両親は離婚をしており、父親に会うのは半年に一度ほど。 「父は46歳ですが、見た目より若く見えると思います。いわゆる“イケオジ”ですね。普段一緒に生活しているわけではないので、仕事や日常の話とかがしたくて食事に出かけたり、ドライブをしたり。一昨年は海まで行きました」
コロナ禍でなかなか会えないなかで久しぶりの再会を果たした二人。餃子さんは少しお高めの焼肉屋にディナーへ連れて行ってもらった。美味しいお肉を堪能する2人。しかしふと気づけば、視線を感じたという。
見回すと、近くのテーブルにいた20代後半くらいの女性2人組がコソコソと話しているのがわかった。なんとなく嫌な感じがするので耳を傾けてみると……。
「こちらに目をやりながら『パパ活かな~』みたいな感じでニヤニヤと話していたんです。父には聞こえていなかったと思うので、気まずくはなりませんでしたが……」
これまで何度も父親と2人で外出していたが、初めて「パパ活」を疑われたそうだ。この日を境に、父親との外出で、人目を気にするようになった。
年の離れた男女=パパ活という偏見
見知らぬ第三者が、親子なのかパパ活なのかを見分けるのは難しい。餃子さんは、「パパ活してそうな服装があると聞いたこともあるが、ファッションには個人の好みがあるので、それだけでは見分けられないはずだ」と指摘する。
「そもそもご飯を食べに来たのなら周りばかり気にしてないで、目の前のご飯だけ見てろって感じです。個人的な意見としては、お金の稼ぎ方は自由だと思いますし、パパ活に見えたとしてもそれを第三者がアレコレ言うのは違うのではないでしょうか」
アパレル店員から小さな声で「彼氏さんですか?」
餃子さんのような経験をした人は他にもいる。寺田美加子さん(20代・仮名)が70代の父と、メンズアパレルショップで買い物をしていた時のことだった。二人で店内をぶらつき、美加子さんは自分用に購入する商品を選び終わり、一人でレジに向かった。父親は「外で待っている」と店の外に出たという。
美加子さんが財布を開いていると、男性店員の口からこんな言葉が出てきた。 「小さな声でコソッと『彼氏さんですか?』って」
美加子さんはすぐに、「いや、父です」と訂正した。男性店員は「すみません、冗談ですよ」と謝罪こそしているが、薄ら笑いを浮かべていた。“本当はパパ活なんだろう”とでも言いたいのだろうか……。
わざわざ聞かれることに不快感
男性店員は20代前半くらいだったそう。このメンズアパレルショップには、この日以来、足を運んでいない。
「そもそもプライベートなことなのに、たとえ冗談でも年の離れた異性といるだけで『彼氏さんですか?』と聞けるメンタリティが全く理解できないのですが。実父と出かけているだけで好奇の目で見られてしまうのは嫌ですね」
今回取材した2人は、これからも父親との外出を楽しみにしているというが、水を差すような出来事に憤りを隠せない様子だった。パパ活という言葉が注目を集めることで、思わぬ弊害もあるようだ。<取材・文/星谷なな>