(「河北新報」令和7年2月22日付記事より引用)
重症心身障害児らの療育などに取り組む仙台市の一般社団法人MOTTO(モット)と放課後等デイサービスなどを運営するNPO法人UBUNTU(ウブントゥ)が、3月にもヘルパーの支援を受けながら重度障害者が働くシェアオフィスを市内に開設する。厚生労働省によると、自営の重度障害者が働くシェアオフィスは他に例がない。
シェアオフィスは青葉区芋沢の2階建ての古民家を借りて開設。利用者に合わせて車いす用スロープを設けたり、休憩用ベッドを置いたりして環境を整える。
対象は市内在住の18歳以上の重度障害者で、通勤や職場でヘルパーの支援が受けられる市重度障害者等就労支援特別事業の利用を想定。利用者はシェアオフィスに出勤し、個人事業主としてパソコン作業や手話指導、アート作品制作など希望する仕事に従事する。報酬は出来高制で支払う。
モットが運営し、ウブントゥはヘルパーの派遣などを担う。企業などからの仕事の受注は両者で進める。
一定の支援を受けて働く福祉的就労として就労継続支援A・B型があるが、車いすでの通勤への対応が難しいなど重度障害者の仕事の選択肢はかなり限られる。シェアオフィスは働く選択肢を増やし、希望する仕事ができるようサポート。利用者同士の交流も図る。
利用に向けた仕事体験として1月上旬、県聴覚支援学校高等部3年の小助川羽良(うら)さん(18)=青葉区=が、同区の税理士法人の事務所でレシートを機械に通しスキャンする仕事に挑戦。ヘルパー役のスタッフのサポートを受けてやり遂げた。
小助川さんは脳性まひのため車いすで過ごし、手話を使う。シェアオフィスの利用第1号に向け、市に事業の利用を申請中で「大きいパソコンを使った仕事もしたい」と笑顔で話した。
状況を見ながら利用者を増やしていく方針で、ウブントゥ副理事長の菅谷拓斗さん(37)は「重度障害があっても希望する仕事や働き方ができるよう後押ししたい」と語る。
モット代表理事の斎藤義久さん(41)は「障害者を雇用したい企業が、どんな仕事を頼めるか試せる場になればいい。最終的には企業と個人間の直接雇用につなげたい」と意欲を示す。