(「河北新報」令和6年12月16日付け記事より引用)
障害がある人の雇用促進を目的とした企業の「特例子会社」が、やりがいや働きやすさを感じられる職場づくりに取り組んでいる。一般の企業に比べ、特例子会社は障害に応じた設備や制度を整えやすいという利点がある。仙台市内の事業所を訪れ、サポート体制をどう充実させているのかを取材した。
個々の特性理解
個別面談を実施
設備面にも配慮
充実したサポート体制
青葉区のオフィスビルに入る特例子会社ミクシィ・エンパワーメント(東京)の仙台事業所では、障害のある25人が契約社員として働く。デジタル事業やスポーツ事業を手がける親会社ミクシィ(東京)やグループ会社から依頼を受け、事務作業や資料作成などの業務を担う。
社員は精神障害や発達障害のある人が多い。3チームに分かれ、リーダー役を決めて業務を分担しながら、グループ企業の福利厚生関連の申請書チェックや、キャンペーン賞品の発送業務などに当たる。
障害者職業生活相談員の資格を持つ管理スタッフ3人が、悩み事や体調面の相談に応じる。2週間に1度は個別面談も実施する。
2018年に入社した精神障害のある仙台市の女性(31)は「以前に勤めた会社では、指示が分からずパニック状態になっても、周りに助けを求めることができなかった。今は自分の特性が受け入れられ、仕事や私生活の相談ができて安心感がある」と笑顔で話す。
セキュリティーも担保
同社は事業所内の設備面にも配慮する。音に敏感な社員のために秒針の動作音がない時計を設置したり、体調に合わせた姿勢をとれるように、昇降式のデスクを用意したりしている。
グループ企業の担当者からは、外注する場合に比べ情報セキュリティー面の問題がなく、業務ミスもないと仕事ぶりを評価してもらっているという。
仙台事業部グループマネージャーの北村奈緒美さん(40)は「社員それぞれの障害の特性を本人だけでなく、社員同士で理解することが重要。細かく指示を出すというよりは、自主性を尊重している」と明かす。
楽天グループ(東京)の特例子会社、楽天ソシオビジネスの仙台オフィス(仙台市)には、障害のある社員12人が勤務する。グループ各社から依頼された備品発注や社員研修の補助業務などを担当する。
仕事にやりがいを感じてもらうため工夫を凝らす。月に1度、東京など全国13拠点の事業所を結んだオンライン会議を開催。職場のチームごとに収支を示し、業務の達成度を数値で可視化させている。
精神障害のある仙台市の男性社員(47)は「上司と話し合いながら特性に合った業務を担当でき、達成感もある」と充実した様子で話した。
[特例子会社]障害者雇用促進法に基づき、企業が設けた子会社。一定の要件を満たして厚生労働省の認可を受ければ、特例子会社の従業員を親会社が雇用しているものとみなし、障害者の実雇用率を算定できる。2023年6月1日時点で特例子会社は全国に598社あり、うち東北は岩手を除く5県に計13社がある。
法定雇用率の引き上げ進む/宮城県は全国下位
宮城県内企業の障害者雇用の実績は改善傾向にありながらも、全国的には下位にとどまる状況が続く。政府は2024年4月、法定雇用率を2・5%に改定し、26年に2・7%に引き上げる方針で、企業側の改善に向けた姿勢が問われる。
23年6月時点の東北6県の障害者の雇用状況は表の通り。宮城労働局によると、宮城の企業の障害者の実雇用率は2・29%と全国40位にとどまる。法定雇用率(23年度までは2・3%)を達成した県内企業の割合も全国43位の51・1%と低迷する。
法定雇用率の対象は23年度まで従業員43・5人以上だったが、24年4月に40人以上に拡大した。26年には37・5人以上に広がる。