中納言定家
春の夜の夢のうきはし
とだえして峯にわかるゝ
横雲の空
新古今和歌集巻第一 春歌上
守覚法親王家五十首歌に
藤原定家朝臣
春の夜の夢のうきはしとだえして峯にわかるるよこ雲の空
よみ:はるのよのゆめのうきはしとだえしてみねにわかるるよこぐものそら 有定雅 隠
意味:春の夜の、(源氏物語の夢の浮橋のように)はかない夢が途絶えて、起き出して見ると峰にかかっていた横雲が峰から離れて上っていく曙の空です。
備考:夢の浮き橋 源氏物語の最終巻五四帖 夢浮橋をイメージしたといわれる。建久九年守覚法親王五十首歌。本歌 風吹けば峰に別るる白雲の絶えてつれなき君が心か(古今集恋二 壬生忠岑)。定家卿百番自歌合。
撰者不明。後鳥羽院より藤原秀能まで、新古今期以降鎌倉時中期までの代表的歌人36人を挙げ、その秀歌を10首ずつ選んだものであり、通常「新三十六歌仙」といえばこれを指す。成立年次は不明だが、宗尊親王を「鎌倉宮」としているところから、将軍宣下(1252年(建長四年))以降に成ったものと推測される。
なお、藤原定家が権中納言になったのは、寛喜4年(1232年) 正月30日。
令和3年7月25日 壱