人9 淳
歌 田
の 保
朝 久
王
乱世に華あり
fujkwara teika
藤原定家
現実へのはげしい絶望感、
無力感は、定家の心をしだいに
歌の世界へと駆りたてた。
野分きめいた風が京の
街を吹き荒れた日、
伴侶を失ってぽつねんと
しているにちがいない老
父を見舞おうと思いたち、
家を出た定家は、そのと
きすでに自らの姿を『源
氏物語』の夕霧とかさね
あわあせてしまっているの
である。そして、老父は
源氏となってしまってい
る。それは見たてといふ
べきではないであろう。
虚構である『源氏物語』
虚構である『源氏物語』
の叙述が、この悲しい体
験に遭遇したことによっ
て人生の真実として了解
され、定家はおのずとそ
のような行動をとらされ
ているのである。
著者:久保田淳
初版:1984年10月23日
発行:集英社
目次
第一章 天才児として
第二章 新風の時代
第三章 豊饒の時代
第四章 大成の時代
第五章 円熟の時代
第六章 古典の世界へ
藤原定家関係図
定家略年譜
参考文献
定家和歌索引