新古今和歌集の部屋

和漢朗詠集 述懐 含雑歌下蝉丸 元禄五年版

 
望也傭才不可攀䑓閣之月
                 橘正道
齢亜顔駟過三代而猶沈恨同伯
 
鸞歌五噫而將去
                  春道
言下暗生消骨火笑中偸鋭刺人刀
                前中書王
載鬼一車何足畏棹巫三峡未為危
 
楚三閭醒終何益周伯夷飢未必賢
                  橘倚草
なにをして身のいたづらにおいぬらむ
 としのおもはんこともやさしく 讀人不知
 
 
 
 (申文     橘直幹)     
(昇殿は是象外の選なり。俗骨は以て蓬莱の雲を踏むべからず。
 尚の書はまた天下の)望なり。傭才は台閣の月を攀(よ)づべからず。
 
 宴会序     橘正道
齢は顔駟に亜り、三代を過て猶沈めり。
恨しく伯鸞に同じ、五噫を歌て将に去んとす。
 
 述懐      良岑春道
言下に暗に消する骨火を生じ、笑中に偸(ひそか)に鋭く人を刺す刀。
 
 感懐      前中書王
鬼を一車に載とも、何ぞ畏るに足ん。棹巫を三峡に棹すと未だ危を為さず
 
                   橘倚草
楚の三閭、醒ても終に何の益がある。周の伯夷飢未必賢
 
 古今集  俳諧歌         よみ人知らず
何をして身のいたづらに老ぬらむ歳のおもはん事ぞやさしく
 
 
よの中はとてもかくてもおなじ事
 みやもわら屋もはてしなければ 蝉丸
かくばかりへがたくみゆるよのなかに
 うらやましくもすめる月かな  藤原髙光
 
  慶賀
                   白
剱佩暁趨雙鳳闕煙波夜宿一漁舩
                   章孝標
錢塘去國三千里一道風光任意看
                   同
想得江南諸父老因君鞭撻子孫多
                   正道
吏部侍郎職待中著緋初出紫微宮
 
 

新古今和歌集 第十八 雜歌下
 題しらず             蝉丸
世の中はとてもかくても同じこと宮も藁屋もはてしなければ

読み:よのなかはとてもかくてもおなじことみやもわらやもはてしなければ 隠

意味:世の中というものは、どう暮らそうと同じ事だ。宮殿も藁屋も永遠のものではないのだから。

作者:せみまる平安前期の琵琶の名人として有名だが、醍醐天皇の皇子、宇多天皇皇子敦実親王の雑色とかいわれているが、不明。

備考:和漢朗詠集。江談抄今昔物語集

 

拾遺集
 法師にならむとおもひたち侍りける比、月を見侍りて
                    藤原高光
かくばかりへがたく見ゆる世の中にうらやましくもすめる月かな
公任三十六人撰、俊成三十六人歌合、和漢朗詠集、栄花物語

 
 夜宿江浦     白居易
剣佩(けんはい)は暁き雙鳳の闕に趨(はし)る。煙波は夜る一漁の船に宿す。
 
 及第詩      章孝標
錢塘は国を去る三千里。一道の風光は意(こころ)任(まかせ)て看る。
 
 感及詩      章孝標
想ひ得たり江南の諸の父の老。君に因て鞭撻すること子孫を多し。
 
 賛在衡      橘正道
吏部侍郎、待中著を職す。緋を著て初て紫微宮より出づ。

コメント一覧

jikan314
刮目天様
どうも私のblogは、難しいと思われており、ほとんどコメントが無いですので、コメントが有るととても嬉しいです。
刮目天様の質問があって、改めて蔵書を読み、又学ぶ事が出来、楽しかったです。学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずやです。 
私は、古代史が好きで、謎が多く、その謎に迫る刮目天様blogを何時も楽しみに拝見しております。
又御覧頂ければ幸いです。
拙句
逢坂や過ぎればあはづ瀬田の雪
(合うはずなのに合わないと焦った)
刮目天 一(はじめ)
不躾なコメントに素敵な歌を付けて丁寧にご回答いただき心より感謝いたします。
コメントをした後に雑色の意味が分かり、自らの教養のなさに恥じ入っています。
学生時代から歴史は好きだったのですが、古文が苦手で、勉強から逃げていました。現在は古代史の研究にはまって、今頃になって悔やんでいます。今後も色々とお教えいただければありがたいです。どうぞよろしくお願い致します。
jikan314
その他新古今和歌集本では、
峯村文人(全集)
蝉丸 生没・伝未承、平安初期の人か。宇多天皇皇子第八皇子敦実親王に仕えた雑色とも、醍醐天皇の第四皇子だとも伝えられる。盲目で和歌をよくし、、、
小島吉雄(筑間書房全集)
蝉丸 作者蝉丸については、くわしいことが分からぬ。
藤平春男(笠間叢書)
生没年未詳。伝未詳。
田中裕・赤瀬信吾(新体系)
蝉丸 生没年未詳。系譜未詳。伝説的人物であり、実像は明らかで無い。
と有ります。
ご参考まで。
拙句
藁屋では琵琶を引いては秋さみし
jikan314
コメント有難うございます。嬉しいです。
川口久雄(和漢朗詠集)によると、
蝉丸(せみまろ) 宇多天皇皇子、式部卿敦実親王の雑色で、盲目にして、琵琶をよくし、、、
とあり、久保田淳(新古今和歌集)は、
蝉丸(せみまろ)生没年未詳。系譜未詳。
そして池上洵一(今昔物語集)
蝉丸 中世以降は醍醐天皇第四皇子と付会されて関の明神と祀られ、、、
によります。
百人一首では、なんとしてるかは、本を知らないので、今度調べます。
又ご意見頂ければ幸いです。
拙句
あふさかは紅葉降り積み掃ききれず
刮目天 一(はじめ)
いつも雅な古の和歌の御解説、とてもいい気持です。
殿上人になった気分になります。どうも有難うございます。
しかし、百人一首にも登場する蝉丸法師が
「宇多天皇皇子敦実親王の雑色とかいわれているが、不明。」とあり、
驚きと同時に、勝手に想像して吹き出してしまったのですが!
雑色とは雑食と同じ、下々の食べ物と同じようなを意味する言葉でしょうか?
しかし、現代では同じ人間に対していう言葉ではないですが、血筋というのは古代は何というか?厳格ですね(;´Д`)
どうも、突然失礼しました(#^.^#)
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