君をおきてあだし心をわがもたば
すゑの松山浪もこえなむ
古今和歌集 東歌
君をおきて あだし心を わがもたば
すゑの松山 浪もこえなむ
古今和歌集 巻二十 東歌
五月
廿六日癸未 陸奧國地大震動。流光如晝隱映、頃之 人民叫呼、伏不能起。或屋仆壓死、或地裂埋殪。馬牛駭奔、或相昇踏。城(郭)倉庫門櫓墻壁頽落顛覆、不知其數。海口哮吼、聲似雷霆、驚濤涌潮 泝洄漲長、忽至城下。去海數十百里、浩々不辨其涯諸、原野道路 惣爲滄溟 乘船不遑 登山難及 溺死者千許、っっっp資産苗稼、殆無孑遺焉。
5月26日癸未の日、陸奥国で大地震が起きた。(空を)流れる光が(夜を)昼のように照らし、人々は叫び声を挙げて身を伏せ、立つことができなかった。ある者は家屋の下敷きとなって圧死し、ある者は地割れに呑まれた。驚いた牛や馬は奔走したり互いに踏みつけ合い、城や倉庫・門櫓・牆壁などが数も知れず崩れ落ちた。雷鳴のような海鳴りが聞こえて潮が湧き上がり、川が逆流し、海嘯が長く連なって押し寄せ、たちまち城下に達した。内陸部まで果ても知れないほど水浸しとなり、野原も道も大海原となった。船で逃げたり山に避難したりすることができずに千人ほどが溺れ死に、後には田畑も人々の財産も、ほとんど何も残らなかった。
末の松山坂下の電柱と津波の被害
津波が遡ったと推察される砂押川