八代集抄新古今六
冬歌
題しらず
中納言家持
かさゝぎのわたせる橋にをく霜のしろきを見ればよぞふけにける
かゝさぎのわたせる橋 師説、冬深く月なき深夜に見わたせば、四方に物の音もなく心すみまさる折節、橋の一筋見えて白く置わたせるさま、更に此下界とも覺ず、天上の心ちして、烏鵲の橋にやなど思ひよそへてよみ出せる也。家隆卿「詠つゝおもふもさびし久堅の月の都の明ぼのゝ空」是も此界の氣色より天上を思ひやりしさま、此家持の歌より思ひ得給へるにや。宗祇云、冬深く月もなく雲も晴たる夜、霜は天に滿てさえ/\たる深夜などにおき出て此歌をおもはゞ、感情かぎりあるべからず、云々。烏鵲橋の事拾遺抄委。
北村季吟
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