題しらず 宇治前関白太政大臣
法性寺ノ入道摂政ノ一男、頼道。母ハ左大臣雅信ノ
女。從一位倫子。号鷹司殿一首入。宇治にヰ
給ふ故にかく云也。平等院を建立し給也。
おられけり紅匂ふ梅の花けさ白妙にゆきはふれども
古抄云。紅梅を雪のふりかくしたるさまなり。
されども紅なれば、白妙の雪にまがはず折れける
と也。
有色易分残雪ノ底。無情難弁夕陽ノ中
増抄云。五文字に先如此いひいだしたるは悦たる
心あり。白梅ならばおられまじきが折られけると也。
紅と白との色をとり合て上下におきて
對によめるしたてなり。
※法性寺 法成寺の誤記で道長の事。
※古抄 不詳。ただし新古今集聞書(牧野文庫本)は、和漢朗詠集 紅梅 有色易分殘雪底 無情難辨夕陽中の影響を受けているとしている。
※有色易分残雪ノ底~