新古今和歌集 巻第十八雑歌下
曉のこころをよめる 皇太后宮大夫俊成
曉とつけの枕をそはたてゝ聞もかなしきかねの音哉
百首哥に 式子内親王
あかつきのゆふつけ鳥そ哀なるなかきねふりを思ふ枕に
あまにならんと思たちけるを人のとゝめ侍けれは
和泉式部
かく計うきをしのひて長らへはこれよりまさる物をこそ思へ
題しらず
たらちねのいさめしものをつれ/\となかむるをたに問人もなし
熊野へまいりて大峯へりらんとて年ころ
やしなひたてゝ侍けるめのと(の)もとにつかはし
ける 大僧正行尊
あはれとて○○ゝみたてしいにしへは世をそむけとも思はさりけむ
読み:あかつきとつげのまくらをそばだててきくもかなしきかねのおとかな 隠
作者:藤原俊成ふじわらのとしなり1114~1204しゅんぜいとも。法号は釈阿。千載和歌集の撰者で定家の父。
備考:八代抄、定家十体、美濃の家づと、古今注、九代抄、九代集抄
読み:あかつきのゆうつけどりぞあわれなるながきねぶりをおもうまくらに 隠
意味:暁の(乱世の)鶏の声を聞くことこそ哀れと思います。長い煩悩の夢の中にいる自分を思っているには。
作者:しきしないしんのう1149~1201しょくしないしんわうとも。後白河上皇の皇女、賀茂神社の斎院。藤原俊成に和歌を学ぶ。忍恋の情熱的な秀歌が多い。
備考:正治二年後鳥羽院初度百首では、結句が「思ふ涙に」とある。古代中国では乱世になると四方の関に木綿をつけた鶏祭った。
八代抄、美濃の家づと、古今注
読み:かくばかりうきをしのびてながらえばこれよりまさるものもこそもえ 隠
読み:たらちねのいさめしものをつれづれとながむるをだにとうひともなし 隠
意味;昔は、物思いに耽っていると親が諌めてくれたが、今は寂しく物思いに耽ってぼーっと眺めていても言葉をかけてくれる人もいない
備考:八代抄、常縁原撰本新古今和歌集聞書、古今注、九代抄、九代集抄
作者:いずみしきぶ平安中期の女流歌人。大江雅致の娘。橘道貞と結婚し、小式部内侍を生む。為尊親王と弟の敦道親王の寵愛を受ける。一条天皇中宮彰子に仕え、藤原保昌と再婚。
読み:あわれとてはぐくみたてしいにしえはよをそむけともおもわざりけむ 隠
作者:ぎょうそん1057~1135源基平の子。平等院大僧正と称される。園城寺長吏、天台座主など。
平成27年8月23日 壱