(此たび) 洛にのぼりいまそかりけるをある人を して額を乞。いとやす/\と筆を 染て幻佳庵の三字を送らる。頓て 草庵の記念となしぬ。すべて山居と いひ族寝とひ云。さる器たくはふべく もなし。木曽の檜笠越の菅蓑ばかり 枕の上の柱に懸たり。昼は稀/\にとぶら ふ人々に心を動しあるは宮守の翁 里のおのこども入来りていのしゝの稲 くひあらし兎の豆畑にかよふなど