なに波津にあし火燒家は
すゝけたれど
重五
炭賣のをのがつまこそ黒からめ
ひとの粧ひを 鏡 磨 寒 荷兮
花蕀馬骨の霜に咲かへり 杜國
鶴見るまとの月かすかなり 野水
かせ吹ぬ秋の日瓶に酒なき日 芭蕉
萩織るかさを市に振する 羽笠
賀茂川や胡磨千代祭り徽近み 荷兮
いはくらの聟なつかしのころ 重五
おもふこと布搗哥にわらはれて 野水
うきははたちを越る三平 杜國
捨られてくねるか鴛の離れ鳥 羽笠
火をゝかぬ火燵なき人を見む 芭蕉
門守の翁に帋子かりて寝る 重五
血刀かくす月の暗きに 荷兮
霧下りて本郷の鐘七つ きく 杜國
ふゆまつ納豆たゝくなるへし 野水
はなに泣桜の黴とすてにける 芭蕉
僧ものいはす款冬を 呑 羽笠
白燕濁らぬ水に羽を洗ひ 荷兮
宣旨かしこく釵を鋳る 重五
八十年を三つ見る童母もちて 野水
なかだちそむる七夕のつま 杜國
西南に桂のはなのつほむとき 羽笠
蘭のあふらに 卜木うつ音 芭蕉
賤の家に賢なる女みてかへる 重文
釣瓶に粟をあらふ日のくれ 荷兮
はやりきて撫子かさる正月に 杜國
つゞみ手向る弁慶の宮 野水
寅の日の旦を鍛治の急起て 芭蕉
雲かうはしき 南 京 の地 羽笠
いかきして誰ともしらぬ人の像 荷兮
泥にこゝろのきよき芹の根 重五
粥すゝるあかつき花にかしこまり やすい
狩衣の下に 鎧ふ 春 風 芭蕉
北のかたなく/\簾おしやりて 羽笠
ねられぬ夢を責るむら雨 杜國
※ なに波津に 拾遺集巻第十四 恋歌四 題知らず 柿本人麻呂
なには人あし火たくやはすすたれどおのかつまこそとこめつらなれ
万葉集巻第十四 2651
難波人 葦火燎屋之 酢四手雖有 己妻許増 常目頬次吉
※胡磨千代祭 賀茂川の稲荷祭。寛永時代の京都の狂賢の火打石売りの事とも。
※三平(マルガホ) 三平二満の略。額・鼻・下顎(三つ)が平らで、両方の頬(二つ)が膨れている顔、おかめ・おたふくのことをいう。
※桂のはな 月の異名
※正月に 天変地異や疫病が発生した場合は、正月をやり直す。
※粥すゝる 山家集、異本山家集 恋百十首 西行
かつすすく沢のこせりのねをしろみきよけに物をおもはすもかな