新古今和歌集の部屋

新古今和歌集序における『歌』の用字による分類 2 素案

伝二条為氏筆 穂久邇文庫蔵 隠岐本識語 「和謌所」

 

2 調査方法とその概要
 天理大学図書館蔵烏丸本、歴史民族博物館蔵為相本、冷泉家時雨亭文庫など印影出版しているもの、宮内庁書陵部、名古屋大学図書館蔵後藤文庫などのインターネットで確認できるもの、国文学研究資料館図書館などで各地の古典籍のコピーや写真を確認できるもの、自収集本など合計135種類(適当に異本番号を1〜135まで振り付けている)の新古今和歌集の用字を調査した。調査した135種類の異本の概要は表1のとおり。

 その序について、真名序は、題字の「和歌集」から「謳歌」までの6カ所、仮名序は、「大和歌」から「自らの歌」までの9カ所、隠岐本識語は、「和歌所」から「全ての歌」までの8カ所、合計23カ所の「歌」、「哥」、「謌」、「うた」、「倭哥」(「和歌」の表記はそのままとした)などの用字を調査した。主な異本と全体の用字数を表2に掲げる。

 用字で最も多いのが、仮名序では、「やまとうた」と「七代の集に入れる哥」の108件、「集めたる哥」の106件、「万葉集に入れる哥」の105件、「自らの哥」が102件と続く。真名序では、題の「和歌集」の77件と「和謌集」の35件と分かれており、「和哥集」は3件と少ない。一方文章中の「和歌集」は59件、「和哥集」は33件、「和謌集」は20件と「哥」が増えて変化している。「和歌之源」は、「和歌」が43件、「和哥」が32件、「和謌」が13件で、「倭哥」も20件とばらばらの状況である。隠岐本識語は、全体で圧倒的に「哥」が105件(隠岐本の54.7%)と多く、「うた」の22件(同11.5%)がそれに次ぐ。「全ての哥」が欠落2件以外は全てこの用字となっている。

 伝二条為氏筆 穂久邇文庫蔵 仮名序 「かの万葉集は哥の」

 用字に偏りが一番あるのが、隠岐本(23カ所中)では、「85 弘化二年島津久光筆 鹿児島大学図書館 玉里文庫91」と「98 高松松平公益会C1361」の「哥」17個、「3 隠岐本(上)宮内庁書陵部154−122」と「高松松平公益会C978」の「哥」16個が続く。普通本(では、「77 東京大学図書館2−45−5」の「歌」14個が最多で、「25 小倉実教本 國學院大學図書館 貴1858−1859」、「59 慶長本国文学研究資料館92−224−1〜3」、「79 北海道大学図書館1−30−4」の「哥」12個で続き、「50 国文学研究資料館92−10」が「哥」11個となっている。

伝二条為氏筆 穂久邇文庫蔵 仮名序 「新古今和謌集といふ」

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