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新古今和歌集の部屋

前田家本 閑居友5 今上を抱き奉りて先づは伊勢大神宮を

今上をいたきたてまつりてまつハ伊勢大神宮を

お可ませまいらせつきに西方をゝかミていらせ給しに

我も入なんとし侍し可ハ女人をハむ可しより

ころす事なし。かまへて乃こりとゝまりてい可

なるさまにても後乃よをとふらひ給へし。をやこ

乃するとふらひハ可ならす可なふ事也。たれ可は

今上乃後世をも我後世をもとふら者ん。とあり

しに今上ハなに心もなくふりわけ可ミに見つらゆ


ひてあを○乃御衣をたてまつりたりしをミた

てまつりしに心もきゑうせてけふまてあるへ

しともおほ○侍き。されとも後世をとふらひた

てまつり○身おすてい乃ちを可ろめていのりた

てまつれハい可て可諸佛菩もおさめたまハさるへき

かゝれハこれにすきたる善知識ハなしとこそお

ほえ侍れ。とそ申させたまひける。さて夜もふけ

月も可たふきにけれ者御ともの人もなミたに


今上を抱き奉りて、先づは伊勢大神宮を拝ませ参らせ、次に西方を拝み入らせ給しに、我も入りなんとし侍しかば、

『女人をば昔より殺すこと無し。構えて残り留まりて、如何なる樣にても後世を弔ひ給べし。 親子のする弔ひは、必ず叶ふ事也。誰かは、今上の後世をも、我後世をも弔はん。』

とありしに、今上は何心も無く、振り分け髪に角髪結ひて、青色の御衣を奉りたりしを見奉りしに、心も消ゑ失せて経まで有るべしとも覚えず侍き。

されども、後世を弔ひ奉らむとて、身お捨て、命を軽めて、祈り奉れば、如何でか諸佛菩薩も納め給はざるべき。

かゝれば、これに過ぎたる善知識は無しtこそ覚え侍れ。」

とぞ申させ給ひける。

さて、夜も更け、月も傾きにければ、御供の人も涙に

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