千載集に予一首入り悦事
千載集には予が哥一首いれり。させる重代にもあらず。よみくちにもあらず。又時にとりて人にゆるされたる好士にもあらず。しかあるを一首にてもいれるはいみじき面目なりとよろこび侍を故筑州きゝて
「此事たゞ(ナシ)なほざりにいはる(る)かとおもふほどにたび/"\になりぬ。まことにおもひてのたまふことにこそ。さるにてはこのみちにかなず冥加おはすべき人なり。そのゆへは道理はしかあれど人のしかおもふことはありがたきわざなり。此集をみればさせることなき人々みな十首七八首四五首いれる(入たる)たぐひおほかり。かれ(ら)をみるときはいかばかりい(心)やましくおもはるらむとをしはかるにあまりさへ(ナシ)かくよろこばる(る)いみじきことなり。道をたう(ふ)とぶにはまづ心をうるはしくつかふ。に(と)あるなり。今の世の人はみなしかあらず。身のほども○○(よりも)心たかくおごりかまびすしきいきどをりを(むねと)むすびて事にふれてあやまりおほかり。今おもひあわせられよ」
となん申(され)侍し。まことにこのみちの冥加身のほどにも(ナシ)すぎたり。ふるき人のいへることかならずゆへあり。
千載集 第十五恋歌五
隔海路恋 鴨長明
思ひあまりうちぬる宵の幻も浪路を分けてゆき通ひけり
底本:梅澤本
校合:簗瀬架蔵弘安七年奥書本(古本流布本対照方丈記付長明作品抄 簗瀬一雄編 大修館書店より。)を( )内で示す。
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