古事談 巻第一
二十六 藤原為時詩功越前守補任事
一条院御于源國盛任越前守。其藤原為時付於女房献書。其状云、
苦学寒夜紅涙露霑袖
除目春朝蒼天在眼云々。
天皇覽之敢不羞御膳。入夜御帳涕泣而臥給。左相府參入、知其如此、忽召國盛令進辞書。以為時令任越前守。國盛家中啼泣。
國盛自此受病、及秋雖任播磨守猶此病遂以逝去云々。
訳(新体系 古事談 続古事談 川端善明 荒木浩校注による)
寒さに耐えて学問をする冬の夜、涙は血となって袖を濡らし、除目(官職への補任者を決める事)に不首尾だった春の朝、天は青々として我が眼に沁る。
原文には、露があるが、本文には無い。誤植か?
苦學寒夜 紅涙霑袖
除目春朝 蒼天在眼