明月記 建永二年 四月 二十九日。天晴る。午の時、清範召す由を申す。仍て馳せ参ず。清範云ふ、夜前に仰すなり。新古今の御点歌、定家を以て書き出さしむべし。字に誤り無く、早速きの故なりといへり。此の事、甚だ見苦しと雖も、是非に及ばず。即ち五巻を書き出す。未終許りに出でおはしまし、神泉におはします。天竺冠者、已に入洛遅々たり。神泉に参ずべき由仰せらる(国司召し進めらる)。出でおはしますの後、書き出し了んぬ。手箱に封を付けて退出す。ー略ー