伊勢物語繪詞 君がため 手をれる 枝は 春ながら かくこそ 秋のもみぢ し にけりれ かへでのもみぢ むかし、男、大和にある女を見て、よばひてあひにけり。さてほどへて、宮仕へする人なりければ、かへり来る道に、三月ばかりに、かへでのもみぢのいとおもしろきを折りて、女のもとに、道よりいひやる。 君がため手折れる枝は春ながらかくこそ秋のもみぢしにけれ とてやりたりければ、返りごとは京に来着きてなむもて来たりける。 いつのまにうつろふ色のつきぬらむ君が里には春なかるらし