七月
二十五日。天晴陰。夜に入りて雨。和歌所に参上す。新古今の沙汰、昨日の如し。夕に退出し、又帰参す。大僧正参じ給ふ。戌終許りに歌合評定あり。公卿、左衛門督一人候す(僧正御坐す)。御出でおはします、例の如し。予、講師。殿上人、講師の後に候す。評定了りて、当座の会有り。又歌合結び了んぬ。御前に於いて読み上げ、評定す。暁に臨みて入りおはしまし、退出す。興遊の座に侍りて、評定の詞を加ふ。緇素尊卑、万事旧日に同じ。欠くる所は只一人なり。君臣相顧みる。誰か恋慕の心無からん。此の中、悲しみ尤も深ければ、私に満衫の涙有り。
卿相侍臣歌合
題:朝草花、海辺月、羇中暮
卿相侍臣当座歌合
題:暁聞雁、田家鹿、深山恋
左方:後鳥羽院、忠経、慈円、忠良、通光、公経、通具、良平、季能、俊成女
右方:家隆、有家、定家、越前、秀能、具親、丹後、保季、成茂、雅経
左衛門督 通光
※満衫の涙
白居易
長夜君先去 長夜君先ず去り
殘年我幾何 残年我幾何
秋風滿衫涙 秋風満衫の涙
泉下故人多 泉下故人多し
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