つよくいひたつればあさいをしたるやうに聞ゑ
侍ればたゞあさがほのはかなきことわりをこゝろ
にかけて見侍る哥なり。
さをしかの入野の薄はつ尾花いつしかいもいもが手枕に
せん
此秋の野の色々にみだれあひてことの葉もつ
くしがたきをいへる哥なり。いつしかとはかゝる秋
の野のおもしろきに同じくはのこる心もなく
わが思ふ人ともろともにみばやいつかさやうに
侍らんといへり。たまくらにせんとはまことに枕
どにせんといふ事にはあらず。たゞへだて
なくなれたきとの心なり。いつしかといふ事
哥によりてこゝろかはるべし。
引
いつしかも神さびぬるか如本
引
たのめをくわが古寺の苔の下いつしか朽ん名こそおしけれ
※いつしかも神さびぬるか
万葉宗祇抄
いつしかもかみさびけるかかぐやまのむすきがもとにこけむすまでに
万葉集巻第三 鴨足人
何時間毛 神左備祁留鹿 香山之 鉾椙之本尓 薜生左右二
いつの間も神さびけるか香具山の桙(ほこ)杉の本に苔生すまでに
※たのめをく~
新古今和歌集巻第十八
雑歌下
例ならぬこと侍りけるに無動寺にて
読み侍りける
前大僧正慈円
頼み来しわが古寺の苔の下にいつしか朽ちむ名こそ惜しけれ