兼載雑談
一、かたうづらとは、つまのなき鶉なり。一入不便なる者なり。
草木の中のふるみちの月
かたうづらかへるを幾夜たのむらむ
たつとも秋よさもあらばあれ
なさけなくかるべき物かかたうづら
歌にも連歌にも鶉をばぬるゝ、あたゝかにすまじきとなり。公廣といふ人關東より京へのぼりて、發句に、鶉なくのゝ朝
じめりとしたりしを、宗祇聞き給ひて、あさいしたる鶉なきや
う哉。關東の恥辱をかきたると宣ひしなり。
夕されば野邊の秋風身にしみてうづら鳴くなり深草の里
月すまむ夕の空のけしきにてうづらなくなり更科の里
如此こそよみならはしたれと、宗長の語りてき。
※夕されば
千載集 俊成
※月すまむ
壬二集 家隆