
離島へ渡る連絡船で一緒になったオヤジ。島で漁師をしているという。イスラムだ。風格がありかっこよく、周りの人も一目置いてるようだった。
島に着き、船を下りて浜辺を歩きながら、話をした。「トラン(最寄の大きな町)に行ってたんでしょう?何しに行ってたんですか」と聞いてみた。するとニッコと笑い、バックのチャックを開けて中を見せてくれた。そこには携帯電話が・・。「携帯の契約に行ってたんだよ」と。ちょっとずっこけましたが、漁師さんのエマージェンシー道具ですよね、携帯。
「8年前の津波の時(スマトラ沖地震)は、どうでしたか?」
「津波はジャブジャブ来たけど、被害は小さかったよ。誰も死んでない、みんな守り抜いた」「今は、以前と変わらない生活をしてるよ」ということだった。
このあたりは、もう津波の爪跡は全くない。すでに新しい生活が始まっていて、津波は話題に上がらない。話を振ると説明してくれるけど、すでに終わったという雰囲気だった。「日本の津波もすごかったんだろう?どうだったんだ?」と聞かれる。丁寧に説明をして、タイから送られた多くの支援について話し、感謝の気持ちも伝えた。タイ政府から日本に贈られた義援金は2億円、在タイ日本大使館に集まった一般の寄付は4億円強、このことは意外に知られていない。
天職なんて最後まで続けないとわからない。続けられればそれが天職です。 小篠綾子