夜明け前、温泉の流れてくる川を、ジャブジャブとさかのぼります。1時間近く歩き、椰子の葉でできた小さな小屋に着きました。あちこちで、緑色をした硫黄が湧き出ていますが、このあたりは、さらに多いところで、硫黄の匂いがぷんぷんします。
この中で、息を潜めて、グァカマヨという種類の中型のインコを待ちます。コルパという天然のミネラル塩が岩肌からにじみ出ているところがあって、そこに、早朝、インコたちが集まってきます。
実は、5年ほど前まで、その小屋は、猟師たちが、散弾銃を持って、インコたちを捕獲していた場所なのです。鮮やかなインコの羽は、民芸品を作るための材料になっていたのです。5年ほど前に、コンタマーナの町で、ここを保護地区として指定し、猟を禁止しました。森林レインジャーを置いて、森の保護と、ここを訪れる人たちの案内をしています。毎日のように、散弾銃で、一度に何十羽というインコが殺されていたその同じ場所で、インコを待つのはちょっと緊張します。『俺は、あんたたちを殺したりしないからね。見にきただけだよ。その美しい姿を見せてくれ。』
しばらく待つと、ギャーギャーと、インコ特有のにぎやかな声が聞こえてきます。彼らは、声を掛け合って、みんなが集まってから、いっしょに塩を舐めにきます。森林レインジャーの話では、インコたちは、数年前までの、仲間が銃で殺された記憶が残っていて、人間に対して、とても神経質だそうです。人の気配がすると、もう、飛んで行ってしまいます。彼らが、人間に対して警戒を解いてくれるのは、あと何年先の事でしょうか?
秋田