(読売新聞) - 2011年8月19日(金)01:14
全国の水田では、夏の日差しを受けて青々とした稲穂が輝いている。
だが今年は、稲作農家も消費者も、気がかりな収穫期を迎えることになりそうである。
東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、福島、宮城など17都県は政府の指示を受け、コメに含まれる放射性物質の検査を行う。早場米地帯の千葉県では、トップを切って検査が始まった。
放射性セシウムに汚染された牛肉が出回り、食品に対する消費者の不安が広がっている。
政府と関係自治体は徹底した検査で、安心して食べられるコメを確保し、万一、汚染米が見つかった場合には市場に流通させぬよう万全を期す必要がある。
検査は二段構えだ。まず、土壌や大気中のセシウム濃度が高い市町村で、収穫前にサンプル調査を行う。高い数値が出た市町村では第2弾として、収穫後に検査地点を増やし、詳しく調べる。
その結果、国の基準を超えるセシウムが検出された場合は、出荷停止、廃棄処分、東京電力への損害賠償請求という流れになる。
17都県のコメ生産量は約460万トンで全国のほぼ半分を占める。主食の安全性が脅かされる事態になれば、影響は計り知れない。
牛肉問題では行政の対応が後手に回り、汚染が見つかったのは出荷後だった。牛と違って、コメには個体識別番号がなく、市場に出回れば追跡しようがない。それだけに丁寧な検査が求められる。
牛肉や稲わらの汚染に追われ、各県の検査機関は手いっぱいだ。検査に手間取ればコメの出荷が大幅に遅れかねない。だが、ここは安全確認を優先すべきだろう。
ただし、コメの流通は複雑である。汚染米が見つかった場合の管理体制も十分に配慮すべきだ。3年前には、基準以上の農薬やカビが付着した輸入米が、食用に不正転売されていた事故米事件が起きた。同様のミスは許されない。
消費者からは「国の基準を下回っても安心できない」といった声も聞かれる。原発事故の前に収穫された昨年産米が人気を集めているのも、不安心理からだろう。
1986年のチェルノブイリ原発事故の際もセシウムが土壌中などで検出されたが、セシウムによる健康被害はなかったと、国際機関が報告をまとめている。
政府は、消費者が過剰反応することのないようコメの安全性の科学的根拠について分かりやすく説明する必要がある。消費者も冷静な対応を心がけてほしい。
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