醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  190号  聖海(白井一道)

2016-01-25 15:32:00 | 随筆・小説
 
  憲法とは何--たまには政治の話でも--(3)

侘輔 今日は国民主権ということについて話し合わないかい。
呑助 今日もまた、政治の話ですか。
侘助 今、安倍政権が成そうとしていることは国民主権を奪おうというようなことなんだ。
呑助 へぇー、そうなんですか。国民主権が奪われてしまうとどんなことがおきるんですか。
侘助 まぁー、大変なことになるみたいだよ。
呑助 どんなことになるんですか。
侘助 政府を批判するような発言をしたら、刑務所に入れられてしまうようなことになるらしい。
呑助 それは困りますね。消費税が十%になるのは困ると発言しただけで刑務所に入れられてしまうんですか。
侘助 消費税反対、安倍晋三は退陣しろ、とデモを組織したら、刑務所に入れられてしまう可能性は高そうだよ。
呑助 国民主権が奪われるということは大変なことになるんですね。
侘助 「主権」という言葉が実に分かりづらい言葉だよね。
呑助 もともと日本語に無かった言葉なんですよね。
侘助 明治になってからヨーロッパから入ってきた言葉だからね。
呑助 ヨーロッパではどうしてこのような言葉が生まれたんですかね。
侘助 ヨーロッパの中世社会が終わりそうになった頃、商工業者たちの力を利用して中世諸侯たちを支配下に置く、大諸侯が出現してくるんだ。
呑助 農民を支配下に置いていた諸侯たちが自分の支配地域を広げようとして戦っていた時代が中世ですよね。
侘助 そうなんだ。その中でひときわ強大になった大諸侯は何でもできる強大な権力を持つようになったんだ。この強大な権力のことを主権と言ったんだ。この絶対的な権力を絶対王権と言ったんだ。
呑助 権力とはなんですか。
侘助 自分の意志を他者に強制的に押し付けることができる力の事なんだ。
呑助 嫌だと絶対言えないんですか。
侘助 そうなんだ。消費税の支払いは嫌だとは絶対言えないんだ。支払わないなら、強制的に徴収されてしまう。
呑助 そうですね。差し押さえには文句を言えませんものね。税を支払わないというのは一種の犯罪ですものね。
侘助 絶対君主と言われた王様、例えば、フランスのルイ十四世とか、イギリスのエリザベス一世とかを主権者と言うんだ。
呑助 なんでもできる。すべて自分の想いのままだというのは良いですね。
侘助 ロシアのピョートル大帝という絶対君主は若い頃西ヨーロッパで抜歯の技術を身に着けたんだ。自国のロシアに帰り、臣下の歯を抜くことに興味を覚え、何人もの臣下の歯をすべて抜いてしまったなんていうことがあった。臣下は全くたまったもんじゃなかった。
呑助 抜く方は良いでしようけど、抜かれる方は痛かったでしようね。
侘助 この絶対君主から主権を奪い、国民が主権を勝ち取った出来事を市民革命というんだ。その代表的な市民革命がフランス革命なんだ。だから国民はなんでもできるんだ。国民は政府に命令した。その命令書が憲法なんだ。政府に命令する力が主権というものなんだ。