醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  195号   聖海(白井一道)

2016-01-30 12:41:13 | 随筆・小説

  日本語考--テレビ番組を見て---(3)

侘助 今朝、テレビを付けたら辛坊氏が司会する日テレの番組を放送していた。政治評論家の田崎史郎(時事通信社特別解説委員)氏が出演していた。田崎氏は十二時間前ぐらい、安倍総理と酒を飲んでいたと話した。甘利氏の辞任で安倍総理はどうでしたかと、辛坊氏が問いかけると平然としていたと田崎氏は応えていた。
呑助 政治評論家というのは総理と会食し、総理の意向を宣伝する人をいうんですか。
侘助 田崎氏という政治評論家は総理の意向を説明することで生活している人なのでしようね。テレビに出演し、話をする。雑誌や新聞に政府の意向を解説し、宣伝することを生業にしている人なんでしような。
呑助 その会食費は割勘なんでしようかね。
侘助 きっと一流の料亭のようなところでの会食だから、われわれ庶民の一か月分の生活費ぐらいを一回の夜の会食に使っているんだろうけれど、割勘というのは無いと思うよ。多分、総理が出すんじゃないかな。
呑助 奢って貰ったんじゃ悪口は云えませんね。
侘助 そうだよね。悪口を言ったら次がないよ。だから辛坊氏が司会する番組は政府広報の番組みたいなものかな。
呑助 そう言われてもしょうがないかもしれませんね。いや、そうして番組は成り立っているのかもしれませんよ。
侘助 きっとその通りなんだろうね。ジャーナリズムとは権力を批判するものだと思っていたのは間違いなのかもしれないな。
呑助 政府のプロパガンダなんじゃないですか。
侘助 ノミちゃん、難しい言葉を知っているね。中国の新聞や放送は政府のプロパガンダ、広告・宣伝だ。だから真実の報道はないとよく批判しているが、同じようなことを日本のマスコミ、特に日テレの辛坊氏の番組は、そうなのかもしれないな。
呑助 辛坊氏が司会する番組には、真実の報道がないということなんですか。
侘助 そうだと思うね。五十万円貰ったの、どうのという事より、日本の経済がこれからどうなるのか、徹底的に甘利さんと議論した方が日本国民のためなんじゃないかと辛坊氏が発言するとコメンテイターの岩田氏が同意の発言をした。甘利氏の汚職に目を瞑るのが日本国民のためになるということを最もらしく発言し、野党が甘利氏の汚職を摘発するのはどうかというような雰囲気がこの番組の空気だった。
呑助 そうなんですか。庶民は交通違反でもしようものなら、厳しく糾弾されますよ。罰金も取られます。血も涙もなく罰金は取られますよ。
侘助 今、テレビ局は不景気のようだよ。広告収入が急激に減っているようなんだ。すべてのテレビ局の広告料の総額がインターネットの広告料より少なくなったと、いう話を聞いたことがあるよ。
呑助 広告料が減ってきているんですか、通りで最近コマーシャルの時間が長いなーと感じていたんですよ。
侘助 今から百七・八十年前、ドイツの学者、カール・マルクスという人がね、「その社会における支配的な思想はその社会の支配的な階級の思想である」という言葉を言ったんだ。いつの時代もその社会の世論というものはその社会で大きな力を持っている者たちの考えが支配的なんだ。力のない庶民たちの気持ちを代弁してくれる新聞やテレビや雑誌というものは数が少ないんだ。何といっても最大の国民意識を左右するものは小学校から大学にいたる教育機関だよ。この教育が国民思想に決定的な影響を与えているんだ。