雪間より薄紫の芽独活(めうど)哉 芭蕉 元禄間年
句郎 「雪間より薄紫の芽独活哉」。元禄間年。『俳諧翁草』。
華女 早春の雪がつもった野山から山菜を取る。このことって手垢のついた発想なんじゃないのかしら。
句郎 古くは『枕草子第二段』にあるからな。「七日、雪間の若菜摘み、青やかにて、例はさしもさるもの、目近からぬところに、持て騒ぎたるこそ、をかしけれ」と書いている。
華女 雪間の若菜摘みを芽独活にしたところに俳諧があるということなのかしら。
句郎 独活は春先の山菜であるが万葉集にも古今集にも詠まれていないようだ。
華女 香りが強いので好き嫌いのある山菜なんじゃないのかしらね。
句郎 山独活の天ぷらはとても美味しいと思うけど。
華女 天ぷらにするとアクが抜けるのかしらね。
句郎 私はアクを抜いた独活のぬたも美味しい酒のつまみになると思うな。
華女 芭蕉は早春の生命力を芽独活に見つけたということね。
句郎 その言葉に尽きるな。その後、何も言うことがない。