河井克行・案里夫妻の逮捕について
検察は「ルビコン川を渡った」と元特捜検察官の郷原信郎氏は「日本の権力を斬る」の中で述べている。検察が国会議員・河井克行・案里夫妻を公職選挙法違反容疑で逮捕した。この事を郷原氏は検察が「ルビコン川を渡った」と述べている。
ルビコン川は古代ローマの時代、アルプス以北のガリアとイタリア半島本土との境界をなしていた。紀元前1世紀、ローマ帝国内には有力な将軍が並立していた。ガリアの地を平定し、その地の将軍として君臨していたユリウス・カエサルが我が軍隊を引き連れてルビコン川を渡り、イタリア半島本土の中心都市に向けて軍隊を差し向けた。当時、軍隊を引き連れてローマ帝国の中心都市ローマに入ってはいけないという厳しい掟があった。ルビコン川を渡るとは宣戦布告を意味した。
当時、ローマには有力な将軍ポンペイウスが君臨していた。軍隊を引き連れてルビコン川を渡った以上カエサルはポンペイウスとの戦端を切ったということを意味している。負ければ反逆者として殺される内戦をカエサルは決断した。「賽は投げられた」。ローマ帝国元老院が決裁した法を破りカエサルはポンペイウス軍との内戦を決断した言葉が「ルビコン川を渡る」である。
紀元前後、ローマ帝国内では有力な将軍たち間の内戦の結果、内戦を勝ち抜いた将軍が最終的に皇帝として君臨する政治体制になっていく。こうして古代ローマの政治体制が共和制から帝政へと変わっていく過程で生まれた有名な言葉の一つが「ルビコン川を渡る」である。
ひき返すことはできない。突き進むしか道がない。「ルビコン川を渡った」以上、失敗すれば法令違反者として断罪される道を検察が選んだと郷原氏は述べている。
公職選挙法違反として断罪されるのは今まで通常においては選挙直前に票をお金で買うような行為をした時であった。しかし今回の河井克行・案里夫妻の公職選挙法違反にあっては、選挙地盤培養行為として行った政治資金の支出を買収として断罪している。このようなことを今まではしてこなかった。選挙地盤培養のための資金は政治金の支出であり、選挙の買収ではないと今までの検察は扱ってきた。この今までの慣例を破り、選挙地盤培養のための支出を単なる政治資金の支出としてではなく、あくまで票の買収行為として扱っている。検察は今までの慣例を破っている。これはひき返すことができない。カエサルがルビコン川を渡り、ローマに向けて軍を進め、ポンペイウスとの戦いに突き進んだように検察はローマに向けて軍を進めることになると郷原氏は述べている。ローマとは安倍政権を意味していると私は理解した。安倍政権を倒す。これが最終的な検察の目標であろうと郷原氏は言っていると私は思う。
一億五千万円もの大金を一気に選挙区内にばらまく事なんてできない。少しづつ少しづつ広島県内の県議や市議などにお金をばらまき、案里氏の選挙地盤を培養していった。野党議員の選挙地盤にお金を使うことは無駄金になる可能性どころか、或る意味危険ですらある。選挙違反として訴えられる可能性だってあるかもしれない。野党議員の選挙地盤に選挙資金をつぎ込むことは効率がすこぶる悪いように思う。だから自民党議員の選挙地盤に資金をつぎ込み、河井案里候補に寝返ってもらった方が効率的だ。参議院五回当選している参議院自民党長老格の溝手 顕正元議員の地盤に河井氏は選挙資金をばら撒き、河井案里氏の応援を依頼した。河井案里氏は自民党から交付された一億五千万円の資金を使い切って参議院議員に初当選した。
第一次安倍晋三内閣が瓦解したとき、安倍晋三氏を「過去の人」として切って捨てた溝手顕正元参議院議員は返り討ちに合い、落選した。選挙資金が溝手氏は千五百万円、河井案里氏は一億五千万円、十倍の軍資金の差があった。河井案里氏は一億五千万円で参議院議員という職を得た。がしかし検察がこの出来事を許さなかった。国会議員という職はお金で買えるものではないと検察は国民に言った。お金では買えないものをお金で買おうと自民党本部はしたが結果的には買うことができなかった。自民党本部が参議院議員という職をお金で買おうとしたこと自体が間違っていたのだ。またその動機が安倍晋三氏の個人的怨念であったとしたらなおさらである。
選挙という神聖な国民の審判をお金で買おうとした政権は瓦解し、新しい政治体制が生れようとしている。古代ローマ帝国内の戦いが終わった時、共和制から帝政へと政治体制が変わったように。